厨房のウラ側チェック(15) 食品添加物の手品(その4)
最初に、前号のリン酸を説明した時に使用した用語解説について若干述べる。FAOとWHOだが、これは国連の食料農業機関と世界保健機構のことで、それに関係するFAO/WHO食品規格委員会は、一九六二年にFAO/WHO合同食品規格計画を履行するために設立された委員会で、国際食品規格( Codex 規格)を作成、検討採択する。一九九〇年で国際食品規格は167規格あるが、それらの各種規格の内、日本においては「太平洋さけ・ます缶詰」を受諾しているのみである。他の国における受諾も、カナダが30規格、アメリカ24規格、イギリス・フランス・ドイツが5規格と低い受諾状況である。
この国際食品規格は、一九八〇年の貿易の技術的障害に関する協定(ガット・スタンダード・コード)に示され、加盟国が基礎とすべき国際規格として準拠しなければならない。
次に、 GRAS 物質は、 Generally Recognized as Safe の略で、食品添物物安全表示の意である。
添加物の具体的な説明としての二番目には、発色剤として使用されている亜硝酸ナトリウムについて。発色剤は、食品成分の中にある発色成分を、食品の製造・加工・保存等で褪色しないように安定させる役割をもっている。その代表的な亜硝酸ナトリウムは、現在の使用基準で、食肉ハム、食肉ソーセージ、食肉コンビーフ等においては、〇・〇七㌘/㎏以下の亜硝酸根残量にすべきとしている。
また、魚肉ソーセージの場合は、亜硝酸根で〇・〇五㌘/㎏以下とし、イクラやスジコは、亜硝酸根で〇・〇〇五㌘/㎏以下にしなければいけない。これは、単に色の固定だけでなく、鮮度保持、保存性の延長に効果がある。
反面、食品の色素成分であるミオグロビンやヘモグロビンをニトロソ化して、不可逆性の鮮紅色に発色させるため、その使用は発がん物質であるニトロソアミン生成の問題があり、使用の可否が世界的に検討されている。ニトロソアミンの毒性は、わずかな量でラットにがんを発生させるといわれており、その量は約〇・一㎎/㎏相当である。また、亜硝酸ナトリウムの急性毒性は、マウスの経口でLD50二二〇㎎/㎏、ヒトにおける知見は、経口致死量として〇・一八㌘から二・五㌘と推定されている。
なお、WHOのコメントは、六カ月以内の幼児食には亜硝酸塩を加えてはいけない。すべての動物にニトロソアミンは発がん性がある。亜硝酸塩とアミンから生体内でニトロソアミンの生成は起こる。亜硝酸と食品成分の反応物としてニトロソアミンが生じるという報告がある。
亜硝酸は生物の成分として5から10PPM程度は存在していることも忘れてはいけない。よって、評価として、慢性毒性試験の結果を考慮して、100㎎/㎏体重/日以下、ADIの暫定として、ナトリウム塩で0から0.2㎎/㎏体重/日、以上のデータから、読者は亜硝酸ナトリウムの添加物が使用されている食品の表示に注意を払い、商品の購入を決定すると良い。
食品衛生コンサルタント
藤 洋