ご当地ラーメン徹底研究「京風ラーメン」 全国屈指の濃厚派

1998.07.06 155号 10面

昭和51年、京都四条河原町の阪急デパートに、女性客をターゲットとした新しいコンセプトのラーメン店「京都あかさたな」がオープンした。さらりと軽い薄味のラーメンに、甘味などをセットで注文するというスタイルで、店内も京風でキレイなロケーションとした。懐石料理などから想像される、京都は薄口というイメージにピッタリの演出であった。昭和54年からフランチャイズ展開し、新宿野村ビル四九階に店を出した。これがきっかけとなって、「京風ラーメン」は大ブームを巻き起こし、女性がラーメンを食べるという今までになかった大きな功績を残した。

ひと味違う魅力的なスープ

しかし、この京風ラーメンは京都においては少数派。京都のラーメンは全国でも屈指の濃厚さを誇り、濃口が売りである。特に一条寺などは学生も多く、ラーメン店の数も多い。

東京は環七をイメージするようなこってりラーメンの激戦区である。そしておなじこってりでも京都の味は、今流行の豚骨スープとはひと味違う。鶏を主体としたこってり味である。

だしの取り方にもよるし、舌の感じ方にもよるが、元来豚よりも鶏のスープの方がこってり度は高い。鶏を使ったこってり味。残念ながらストレートの麺には京都独自の色合いはないが、鶏こってりのスープには、明らかに京都にしかない独自のラーメン文化の香りが漂っている。

ラーメンに限っていえば、京都は決して薄くないのである

関西うどんとの差別化を狙う

昭和13年、京都駅付近に一台の屋台が出現し、うどんでもそばでもない麺類を売り始めた。屋台を引いていたのは中国浙近省(コウキンショウ)出身の徐永俤(ジョエイテイ)氏。これが京都のラーメンの草分けである。

昭和19年には京都駅東の塩小路高倉に店舗を構え、「新福菜館」と命名。濃口醤油を使ったスープに、薄切りのチャーシューをふんだんに乗せるといった独特のラーメンを出して人気を呼んだ。

徐氏には日本各地に中国人の仲間がおり、濃口醤油を使ったのは東京在住の知人から情報を仕入れたか、薄味の関西うどんに対抗して差別化を狙ったかのいずれかと推測される。この味が反響を呼び、京都ラーメンの基本系となった。

シチューのような舌さわり

新福菜館の濃口醤油の流れに続き、「珍遊」や「ますたに」など、鶏がらベースの醤油味に、豚の背脂を乗せた濃厚な味が出現した。豚骨スープに似た濁ったスープだが、鶏をベースにしているところが豚骨とは明らかに風味が違う。

さらに鶏をゼラチンが溶け出すまでたき出した「天下一品」に代表される超濃厚なスープのラーメンは、京都で大ブームを呼び、東京にも進出してきている。脂がスープと乳化してドロリとしており、シチューのような舌ざわりは、新たなラーメンの分野を築いた。

このように大きく分けると現在京都ラーメンは三つの流れに分けられる。しかし、いずれもその味は濃口であり、濃厚である。「京都は決して薄くない」。ラーメンに限ってはこれが京都のキーワードといえるであろう。

「京都ラーメン」といっても聞きなれないが、「大阪ラーメン」と呼べるものを持たない関西地区にあって、ひとつの確立したラーメン文化を持ったエリアである。

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