最新エスニック食材講座(3) 「タマリンド」

1993.01.04 19号 8面

日本人には馴染の少ないタマリンドですが、最近、とくに東南アジア料理の調味料として需要が高まってきました。日本でもとんかつ・ウスターソースなどの酸味に使っています。

マメ科の植物の実で、そら豆状の莢の中に果肉があります。料理用に使用するのは熟した莢を割って調味料またはドリンク用として、コクのある酸味と甘味を利用します。東南アジアの街中でリヤカーに果物や野菜を並べ、その中に甘い種類の青い五、六㎝のタマリンドを山積して売っています。酸味は少なく優しい甘さだけが口に残ります。

さて完熟したタマリンドは東南アジアのマーケットでは果肉だけを集めて、バター一ポンド程度の塊のパッケージにして売っています。種も入っていますから、使用する際に手間がかかります。東南アジアの特にカレー料理の酸味には、とくに欠かせない存在です。

その他酸味を必要とする料理に使用します。またバングラデッシュでは魚の切身の腐敗を防ぐために水で薄く延して漬け込んだり、丸のままの魚にはペースト状に延して、表皮全体になすり付けて置きます。また腐敗防止ばかりでなく、臭み抜きとしての効果も期待できますので、青身魚には大いに利用できます。

酒石酸やクエン酸の酸味を持つタマリンドは旨味もありますから、タマリンドジュースとしても人気があります。ビタミンCも多く含まれていることから美容ドリンクとして、また、便秘にも効果を発揮します。タイで購入したタマリンドキャンデーは小さい姿ながら、酸味と甘味が程良くブレンドされていて、熱帯の気温の中で口の乾きを快くいやしてくれました。

タマリンドの種は必要が無いので取り除いて、ペースト状にした「タマリンドペースト」があります(百貨店のスパイス売場・高級スーパーマーケット)。カラメル状になっていますから、スプーンで必要なだけすくって使用します。

料理の旨味のかくし味は酸味にあります。ぜひお試し下さい。

スパイス料理研究家

朝岡和子

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