絶対失敗しないための立地戦略(7) 夢の立地“黄金回廊”とは

1993.01.04 19号 23面

《人々が回廊を 回遊する》 客が一定のエリア内をぐるぐると回遊し、“溜まる”場所こそ最高の立地、つまり「黄金回廊」である。

これは、前述してきたように、人の集散源である駅や各種ターミナルに集まる人々を目当に、まず「点」である商店が出店し、次いで、これらが次々に集合して、一本の「線」となる商店街が発生。さらに拡大化して「面」となり、再びこれらが複合化、機能分化「積層化」として、いわゆる大きな“繁華街”へと発展し、商業地は形成されていくわけだが、こうした複合化、積層化された各種商業地のなかでも、最も効率が良く、最高の立地形態を備えているのが、俗に専門家達の間でいわれている“黄金回廊”といわれるもの。

人の集散源である駅やターミナルを中心にして、商店街や専門店群が立ちならび、そのつき当たりともいうべき場所にデパートやショッピングセンター、スーパーなどの、大量に人々を吸収する大型誘客施設が存在。そしてこの回廊をつなぐ、裏側に各種飲食店群が張りついている。

人々(客)は、集散源である駅やターミナルと、商店街で結ばれた通路と、これまた、大量の吸引能力を持ったデパートやショッピングセンターの大型誘客施設の“回廊”を、ぐるぐる巡り、回遊する。

ショッピングや、レジャーで疲れた人々は、これら商店街や大型施設に張り付くかっこうで点在している各種飲食施設で、憩い、疲れをとり、友達や家族や同僚との会話、コミュニケーションを楽しみ、リフレッシュして、再び回廊へと繰り出していく。

これが「黄金回廊」の基本展開パターンである。ここで重要なことは、集散源である駅やターミナルと、商店街という回廊で結ばれている大型誘客施設との距離が、あまり近すぎても遠すぎてもダメであるということ。その距離はおよそ四〇〇~五〇〇㍍。徒歩時間にして、五~六分というところ。最大限でも徒歩一〇分圏(およそ800㍍)である。

これ以上近くても遠くても、人々の群れは回遊してくれない。(あまりにも近すぎてダメな例の代表が駅ビルである。かつての東京・池袋などがその代表例で、別名“駅ブクロ”などと呼ばれ、マグロのように巨大に伸びた東口側の西武デパートと、西口の東武で代表される大型誘客施設が駅前にあったため、池袋サンシャインのできるまでの池袋は、駅前集中型の典型パターン。人々の回遊性のない、商業地としては二流、三流のロケーションであった。

《 黄金回廊の典型 銀座、渋谷》 例題であげた池袋の例はわかり易く説明するためのマクロの例であるが、これと似た商業地は、ミクロ圏でも全国中に存在している。

多機能化、複合化しすぎてはいるが、「黄金回廊」の典型は、銀座や渋谷にその例を見ることができる。(銀座の場合、JR有楽町駅や、各種地下鉄銀座駅が、人の集散源であり、三越、松屋、松坂屋などといった大型施設が大型誘客施設であり、各銀座の商店街や、ショッピングモールが回廊に相当し、各商店街の横丁に密集する飲食街群‐‐という構成になる)

マーケティング・コンサルタント

戸 田 光 雄

(㈱タック代表取締役)

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