外食産業の2000年を展望する:OGMコンサルティング・榊代表

2000.01.03 195号 11面

銀行の再編が外食産業に与える影響は深刻だ。金融システム不安で銀行の貸し渋りが加速し、銀行から資金を借りるには限界がある。

いまOGMの会員には、銀行一本の資金調達のやり方を変え、リースやファイナンスを上手に活用したり、協同組合をつくって資金調達をしなさいと言っている。

米国では、投資会社がいくらでもあり、日本に比べ上場へのバーが低いので、直接調達をしやすい環境ができている。日本もいずれ金融の規制緩和が進めば、そうした会社ができて資金調達がしやすくなるだろう。

たとえば車一台購入しようとした場合、販売店で一〇万円の値引きをしてもらっても、金利は四・五~五%。一方、自動車のリース会社では、値引きは一切せず、五年間は車の所有権がローン会社にあるとしても二%のローンが組める。どちらを選ぶか。

店舗の場合、キッチンを丸ごと融資し、金利は二%でいいという話がこれから進むだろう。新しいスタイルのリース会社やファイナンス会社がこれからどんどん産まれてくる。その時、銀行調達しなくてもできるのが飲食業だ。これを期待している。

すでに大手リース会社やファイナンス会社などからアプローチがあり、これからわれわれも新しい動きをする。

三年先には資金調達の仕方が大幅に変わってくるだろう。

成長の止まった社会で投資をやめれば、従業員の士気が落ちる。ひとつのコンセプトは常に七~一〇年が限界。そのサイクルの中で、投資を絶対回収するという考え方で、新しい物に挑戦し、投資をしていくなら、銀行以外でも調達はしやすい。従業員の士気も高まるだろう。

昨年は未曾有の不振に見舞われたが、それでも伸びている店がわれわれのグループに六割はいる。また、前年割れをしていた店も、積極的に新しいコンセプトを仕掛けてもうけている。新しいことを提案すると、お客さんは間違いなく来てくれる。

新しい提案ができるために必要なことは、(1)ノウハウや情報の収集(2)有能な人材の確保(3)資金の調達(4)良い物件の確保。

人とお金と土地は、いま追い風だ。人材は、大企業よりも飲食店を安心だと思って来る人が多い。資金も高回転で利益の出せる店をつくれば、調達先はいくらでもある。貸したい人はたくさんいるが、怖くて貸す先がないというのが現状。だから可能性のあるところにお金は集まる。

マイナス要因は、マーケットが停滞しているということだが、何もしなかったらさらにじり貧になっていく。

これまでは米国の外食産業の物まねをして、素晴らしいオペレーションシステムを身につけて成長することができた。しかし、それは模倣の時代だった。

米国流のシステムが皆からノーと言われはじめたのだから、旧来の専門店のやり方に今度はシステムをうまく取り込んで、いろいろな提案をお客さんにする時代が来た。提案ができればノウハウはそこで育つだろう。

常に今のままでいいということではなくて、好奇心を持って人の喜ぶこと、お客さんを感動させることにこだわり続ける経営者であれば、絶対ひらめくはずだ。

オープンキッチンの店がはやっていることは、システム崩壊のシンボルといえるだろう。これまではシステムを見せ過ぎると、お客が来なかった。

いまは、とんかつ屋もオープンキッチンになり、彼らは良く勉強している。調理人がいること。また調理人の人間的教育ができる経営者がいることがポイントになる。

ひとむかし前の経営者は、技術がないために調理人に負けていた。経営者は、人生観や教養など人間として優れていなければ、調理人を説得し育てられない。

専門店の技術や専門性を、合理化されたシステムとどうひとつに融和させていくかは、従業員の人間性にしかないと思う。これからは人間を育てるシステムをつくらなければならないだろう。

ハワイなどで食事をしていると、きまって従業員が「everything OK?」(うまくいってるか? エンジョイしているか?)と聞いてくる。それから「ビール一本どうか?」「デザートは?」と聞いてくる。これが日本のマニュアルでできるか。

従業員が誇れる現場をつくることを、経営者はやらなければいけない。お客が満足のいくレベルのサービスを、従業員にできるよう訓練しているか。それを今までのチェーンは否定してきた。

システムやマニュアルがあるから安心という風潮は、これから絶対通用しないだろう。技術の進歩で楽になったものを怠けるのではなく、それをどう活用したらお客さんが喜ぶかだ。そうした意味では、本当に面白い時代になると思う。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら