厨房のウラ側チェック(20) 食品添加物の手品(9)
食品添加物として表示にでてくる保存料には、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウムなどがある。これらの保存料は、食品を微生物の増殖から防ぎ、商品価値が低下するのを延長させる働きを持っています。そのため、あらゆる商品が、使用基準に基づき添加しているのが現状です。とくに、漬物、魚肉ねり製品などは、限度いっぱいに使用されていますし、食肉製品などには必ず入っていますので、消費者は無意識のうちに、沢山の保存料を摂取しています。
保存料の効果は、PH、微生物汚染度、加熱、溶解・分散及び併用により左右されます。例えば、PHは酸性が強いほど抗菌力が強くなりますので、PH調整を低くすれば、少量の保存料で期待できる効果が増大します。次に、食品についている微生物の量が少ないほど、少量の添加量で効果が得られます。それには、添加する食品を清潔に取扱い、初発菌数を低くおさえ込むことが、添加量を少なくする最良の補助手段になりうるのです。その他、添加後食品を加熱すること、添加量が食品の水分に均一に溶解していることなどがあります。
では、安息香酸ナトリウムの安全性から述べてまいります。
安息香酸ナトリウムの急性毒性は、ラットの経口LD五〇2・7g/㎏、ネコはグルクロナイド抱合の欠除のため、中毒死します。短期毒性のデータでは、ラットに六%の安息香酸ナトリウム添加飼料を三週間投与したところ、二週間以内に一九匹が死亡しました。飼料の摂取量は著明に減少し、ほとんどの動物に烈しい下痢が起こったのです。一九七五年のデータでは、ラットの安息香酸ナトリウムの最大耐量は、ほぼ二%であるとされています。
慢性毒性の実験では、マウスで安息香酸40㎎/㎏/日、次亜硫酸ナトリウム80㎎/㎏/日及び両者を混合したものをエサに混ぜて、一七ヵ月間飼育したところ、八ヵ月後の死亡率は単独投与群が三二%なのに、混合投与群は六二%に高まりました。ヒトにおける知見では、安息香酸ナトリウムの5・7㌘で特異な胃腸障害を起こすヒトもいます。ヒトのADIは0~5㎎/㎏/日と記憶して下さい。ソルビン酸とそのカリウム塩については、急性毒性のラットの経口LD五〇は92・4㌘/㎏、マウスの経口で5・86㌘/㎏となります。慢性毒性実験のデータでは、マウスやラットのShtenberg Dickenの結果では問題はありませんでした。
最後に、WHOのコメントとしては、「ソルビン酸の代謝は容易に行われる。ヒト及びラットでの体内酸化機構はわかっている。慢性毒性試験から、ソルビン酸塩は遊離酸同様無作用量を指示しうる。ソルビン酸及びそのカリウム塩は、経口または皮下注射で腫瘍を発生しないことが実証されている。ソルビン酸の不純物であるパラソルビン酸の慢性経口投与実験では発ガン性はなかった」としています。
ヒトの一日摂取許容量(ADI)は0~25㎎/㎏/日であります。(ソルビン酸として)しかし、最近、亜硝酸と結合すると発ガン、物質に変わることがわかってきました。この亜硝酸は、発色剤として肉製品によく使用される亜硝酸ナトリウムです。これは酸性状態で加熱すると問題物質ができるようです。
今回の号で、添加物は一応終了しますが、読者はくれぐれも添加物の入った食品等を安易に摂取しないようにして下さい。
食品衛生コンサルタント
藤 洋