魚食材最前線(10) エルニーニョ影響消滅、近海ものに変化も

1993.01.18 20号 22面

新年おめでとうございます。昨年は、外食産業にとり、戦後最大といわれる不景気で、大変な経験をしたことと思われる。この経済環境も、今年の夏頃までは続くとの見方が多い。われわれ外食産業にたずさわる者として、一日も早い回復を願うところである。

食の世界は、何といっても原料、素材が一番大切である。食材、特に魚であるが、今年の魚の状態は、全体として昨年夏すぎに約五年間続いたエルニーニョが消滅して暖流が日本近海に直線的に流れるようになり、今年の日本近海の魚穫量に変化が出ると思われる。それではどのような魚が取れるか‐は予想は難しい。これが正確に分かれば営業も楽なものだが。

この数年近海の魚に大きな変化がみられる。第一にサバ、イワシの不漁であり、一昨年はスルメイカの大漁、サンマの大型化、マグロの好漁、カツオの不漁があり、昨年は秋鮭の不漁など、かなりの変化が見られる。これらはみなエルニーニョの影響とばかりはいえない。昨年の近海ダコは好漁であった。アフリカのタコも好漁だったので、年末の値下がりではトップであった。そして昨年の夏以降、遠洋マグロは不漁だったことなど、分からないことが多い。

エルニーニョによる気候の変化、台風の増減による海中のプランクトンの変化、加えて各国の政治、経済による専管水域の変化などによる魚穫量の増減、その他地球上のさまざまな変化で左右されている。

昨年はロシア、特に北方海域での魚穫が激変していた。特にカニ類に大きな変化が出ていた。輸入魚が増大した現在は、世界経済の動向による替為の変動によっても価格は大きく変わる。

魚を扱う者としては、工業製品とは異り、いろんな人的変化と自然変化を見極めて経営戦略を立てる必要がある。他産業より高度な頭脳を要求される。加えて消費者は気ままである。イタリア料理にブームがくれば、イタリア料理店に押しかけ、ブームが終われば増加したイタリア料理店は倒産するといった始末である。

活魚料理も同じことで、現在はもつ鍋ブームである。このように新しい物は常に変化という不安がつきまとっている。

しかし、歴史という長い間の中から残った料理が、その国の料理として定着し、市民権を得るのである。その基本は安価でありおいしいことである。

年頭に当たり、激動の年ではあるが生き残るためには周囲を見て、反省し自分を見直してもらいたい。われわれ食材業者もこのあたりを頭に入れ、外食産業に喜ばれる食材の開発と価格の設定にも心を配るところである。

中松物産㈱

専務取締役 中山昇三

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