企業直営(FC)を拝見 アートコーヒー「アートコーヒーショップ」
アートコーヒー(東京都目黒区中目黒、03・3719・1151)は、他社が外食部門は別法人にしているところが多い中、本体で運営している。
アートコーヒーが、外食分野に進出したのは、昭和11年、京橋に喫茶店をオープンしたのが始まりである。同社は、この年を社の外食進出元年として定めている。
現在、一八〇円コーヒーショップが全盛で当り前のようになっているが、アートコーヒーは、昭和30年に、現在と同じようなスタンドコーヒーショップを出店している。しかも、当時、一般喫茶店は六〇円であったのに対し、アートコーヒーのスタンドコーヒーショップは、三〇円であった。
その後、昭和40年代後半、一般喫茶店が一八〇円で同ショップは、一〇〇円であった。この一〇〇円コーヒーは、かなりの期間続いた。通常の喫茶店のコーヒー一杯の価格が二〇〇円以上になっても、この一〇〇円は続いた。このため、今日では考えられないようなことがあった。
それは、喫茶店の組合が、「あまりに安くコーヒーを提供し、一般喫茶店に迷惑をかけているので、即時中止して欲しい」という申し入れであった。
同社が何故喫茶店を展開したかというと、現在の若林秀雄会長が個人の喫茶店で、同社のコーヒー豆を使用しているというので、飲みに行った時、同会長が満足するコーヒーではなかった。このため、同じコーヒー豆を使用して、正しくコーヒーを抽出すれば、このような、すばらしいコーヒーになるということを示したかったということらしい。
アートコーヒーは、現在、一三〇店舗、年間売上げ一〇〇億円前後である。一三〇店舗のうち、ファーストフード七〇店舗、一般喫茶店三〇店舗、その他が、居酒屋、お好焼きなどの店舗となっている。
同社は、いま話題となっている二毛作店舗は、早い段階で研究していた。きっかけは、銀座八丁目店で、二階を居酒屋に改造したときに、大変人気が出た。一階の喫茶ホールで待ち合せて、二階に上るというケースが多い点に目をつけ、昼と夜をうまく使い分ける店の可能性を追求した。その結果が、現在、目黒区東山にある店舗で、昼は喫茶であるが、夜は和風居酒屋となる。UCC、サントリーの合弁会社「ブレス」が展開している「プロント」は、昼がコーヒーショップ、夜は、ショットバーに変る二毛作店だが、今日的な店舗だけに若者に人気がある。
アートコーヒーは独自の二毛作店を追求してきたわけであるが、酒類メーカーとの共同事業の可能性の追求をしたことがあった。しかし、時期が早いということで見送られた。アートコーヒーは、早い段階で、いろいろな研究課題に取組み商品を市場に出してきた。例えば、コーヒーシェーカー、炭酸入りコーヒーなどである。
しかも、同社の会長である若林秀雄氏は、早い段階で、いづれは、リキッドコーヒーの全盛時代がくるということで研究をかさね、製品を市場に出した。しかし、また、コーヒーが、レギュラー、インスタントに依存していた時代で今日のような花盛りではなかった。むしろ、アートコーヒーのリキッドコーヒーは異端児扱いを受けた。時代の先取が早いアートコーヒーが今後、どのような外食展開をするのか注目される。