飲食FC最前線(11)そば・うどんFC最前線
政府の構造改革は着実に進んでいる。FCについても、経済産業省が日本FC協会と協力して、統計の整備を行った。その影響からか、昨年末の日本FC協会発表のFC統計資料がやや変化した。フォーム自体に変更はないが、統計資料やサンプル数の変更が見られ、また、大勢に影響のない項目については削除されてしまった。
以前までの資料には、そば・うどんFCの項目が列挙されていたが、FCに与える影響度(売上高・店舗数)が約一%強しかないということもあり、今回からは表1のとおり、その他ファストフードという項目でくくられてしまった。そば・うどんFCの市場における存在意義とはいったい何なのであろうか。
日本において、古来からの食べ物であるそば・うどんは、外食産業において、やや元気がない。ハンバーガーやおにぎり、弁当・惣菜、牛丼、ラーメン、コーヒーなどは、よく新聞紙上を騒がすが、そば・うどんは取り上げられることが少ない。それはなぜか。
商品の低価格化が進む中で、そば・うどんもその影響を受けている。しかし、商品原価を低減しようとすると、うどんは具材、そばはそば粉の割合を減らしたがる。
うどんの原料は小麦粉であり、具材が原価や差別化の鍵を握る。また、そばはそば粉につなぎとしての小麦粉を混ぜて作るが、最近は、小麦粉の方の含有量が多い。ちなみに、三〇%以上そば粉が入っていればそばと称してよいことになっているらしい。いずれにせよ、そばの決め手はそば粉にある。
よって、原価低減をしようとすればするほど、家庭で食するものとたいして変化がなくなってしまい、客離れが進むという結果になる。
ほかに、ラーメンブームに押されていることも少なからず要因として言えるだろう。
そば・うどんは、もともと標準化による統一化がしづらい商品である。麺は生きており、麺を食べ物にしようとすると、一概にマニュアルによるオペレーションに落とし込めない。また、気温、湿度によって微妙な差が出てくる。
また、もともと、小麦粉一〇〇%で作られているうどんは、家庭の味と差別化がしづらい。
消費者にわざわざお金を払って食してもらうとすると、それなりの理由がいる。地域独自の味をメーンとし、特産品的な売り方をされているのが多いのはそのためだ。
他方、そばについては、そば粉の含有量が決め手になるが、それ以外で家庭の味との差別化は非常に難しい。低価格では、「立ち食いそば」という非常に強力な業態が存在しており、多店舗化を狙うFCチェーンにとっては、お客を引き込む強力な要因が必要になる。
よって、そば・うどんにおいて、職人でない素人でも開業できるようなFCパッケージを開発するのは非常に難しい。
それでは、各そば・うどんFCはどのような点で差別化をし、お客様を引き込んでいるのであろうか。
うどんFCの代表格は、「山田うどん」であろう。バラエティーに富んだ低価格な商品でファストフードとしての地位を確立し、店舗数二二〇店を超えている。また、最近の注目FCはモスバーガーグループの「なか卯」である。丼物が主体となるが、麺類も二五%の構成比を占める。
うどんFCと比較すると、そばFCは特徴が多い。「北前そば高田屋」は宴会セット・コースの構成比が高く、日本古来からの居酒屋そば風な業態になっている。「そば蔵」は、本格的に本そばのFCである。長野を中心に展開しているFCだが、麺とつゆを本部が供給する信州そば専門店である。
このほかに立ち食いそば業態の「六花そば」、効率的にゆであがる自社開発の厨房機器をそろえている「笠置そば」などがある。
(中小企業診断士・三浦紀章)