新店ウォッチング:「フーチン」八王子堀之内店

2001.04.02 225号 4面

西武百貨店、西友を中核とするセゾングループの外食企業、西洋フードシステムズが、既存店約一八〇店を有するファミリーレストラン(FR)CASAの業態転換を図って積極的な展開に乗り出しつつある。今回は、その新業態のひとつである中華FRの「フーチン八王子堀之内店」を訪れてみた。

既存のCASA店から業態転換したばかりの店舗は、「フーチン」のシンボルマークである「四角いパンダ」のサインが掲げられ、交通量の多い街道を走るクルマからもひと際目立つ存在である。

西洋フードシステムズでは、一九九八年から埼玉県の新所沢で既存のCASA店を転換して、秘かにこの中華FR業態の実験を進めてきたということだが、昨年10月、ついにチェーン展開を前提とした二号店「フーチン南林間店」を出店。その後も、戸塚、座間と続けざまに出店を重ねて、本年2月に五号店となるこの店を出店した。

外装部分は、前述の「パンダ」のサインと外壁のカラーリングのほか、入口まわりに若干の変更が加えられている程度であるが、バリアフリーの規格で統一された内部は、全く新しい店として生まれ変わっている。

ナチュラルな色合いの木製の飾り柱が立ち並ぶ客席は、配置自体が大幅に変更になっているのはもちろんのこと、オリエンタルな絵柄が入った行灯風の照明器具が下がり、壁面にもそれらしい飾り付けがなされている。

また、パントリーわきの通路にはドリンクバイキングのコーナーが新しく設けられているほか、初期の店にはなかった高さの低いパーテーションが柱と柱の間を区切っており、見通しの良さを生かしながら、各テーブルの独立性を増すことに成功している。

メニューには、メーン商品のフーチンラーメン三八〇円、チャーハン四八〇円、焼き餃子一八〇円など競争力のある価格が並び、主力商品の一品単価は四〇〇~五〇〇円、メニュー全体でも七〇〇円を超える商品はほとんどないという驚異的な価格設定である。

さらに、ドリンクバイキングは平日昼間が一二〇円、5時以降および休日が一八〇円という時間帯別の価格設定で、郊外居住者のファミリー市場を三世代まとめて集客するために、客単価を一〇〇〇円以下に抑えることを最大の目標にしたという苦心のほどがうかがえる。

また、単なる価格訴求だけにとどまらず、魚介系スープを使用してあっさりタイプで仕上げた「フーチンラーメン」や、変わりチャーハンの「カニあんかけチャーハン」、野菜系の「ニラ餃子」など、トレンドの商品もしっかりとメニューに組み込まれている。

この価格帯と商品クオリティーを実現しながら、オペレーションに破綻をきたさずに利益を確保するシステムを構築するために、実験店で二年以上の年月を費やしたという同社の意気込みが凝縮された店舗であるといえるだろう。

新規出店と既存店の業態転換を併せて、三年間で一〇〇店舗の出店を計画しているということであり、長引く不況の中で、攻めの姿勢に転じた今後に注目が集まっている。

○取材者の視点

中華料理の低価格業態チェーンとしては、すでに先行している「すかいらーく」社のバーミヤンが、昨年暮れの段階で三五〇店舗以上を展開しており、いまもなお順調な店舗展開を続けている。

バーミヤンが見出した、この中華料理分野の新しい価格帯には、いずれ他チェーンの参入があるだろうとの予想はあったが、ついに真っ向から勝負を挑む大手チェーンが現れたということになる。

フーチンでは売れ筋商品の価格帯はバーミヤンと同じラインにそろえた上に、さらに一品の上限価格やサイドメニューの価格を下げて提供している。

メニューブックを一見しただけでは両者は同じような商品構成に見えるかも知れないが、バーミヤンはあくまで一品料理を意識した専門店の低価格型というスタイルになっているのに対して、フーチンのメニューは、よりファミリーレストラン型ともいえる品ぞろえと価格設定になっているのがわかる。

この勝負の軍配がどちらに上がるかは、これからの展開を見るしかないが、フーチンについていえば、客単価戦略を優先するあまりに、商品の魅力を十分に発揮できない品ぞろえや調理オペレーションに陥ってしまう可能性が気にかかるところだ。

少なくともテーブルサービスの業態において、同じ対象客層を狙うフォーマットで先行チェーンと対抗する場合に、低価格を武器に勝負に出ることが有利に働くかどうかの判断は難しい。

地域で競合する店舗同士での一騎討ちになったときには、競合店にはない魅力ある商品やサービスで満足度を高める方向を狙うことが、最終的な勝利を収めるカギになるケースも少なくないからである。

○店舗データ

◆「フーチン八王子堀之内店」(西洋フードシステムズ、東京都八王子市堀之内三‐三〇‐一〇、0426・70・7045)営業時間=午前10時~翌午前2時

◆筆者紹介◆

商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけ、SCの企画業務などを経て商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。