施設内飲食店舗シリーズ 大崎ニューシティ(東京) 遊歩道が集客に力

1993.03.01 23号 4面

「大崎ニューシティ」は、JR大崎駅東口に展開する。大崎駅東口第一地区第一種市街地再開発事業と称しているもので、総事業費約三五〇億円を投じて、昭和62年1月に完工、地区面積三万二二〇㎡、総敷地面積二万六〇〇㎡、建ぺい率六八%という内容で、高中低層合わせて計五棟のビルから成っている。

施設概要は左掲のとおりで、この五棟で、これら建物の総面積は一二万三五〇〇㎡(三万七四〇〇坪)におよんでいるが、このほかにはイベント広場や散歩道、緑地など延べ一万二四〇〇㎡(三七六〇坪)のオープンスペースも展開している。

一方、これら施設群は、大崎駅とはアーケードスタイルの空中歩道(ペデイストリアンデッキ・全長三七m)で、結ばれており、駅からの来街者はストレートに各施設へとアプローチすることができる。

ところが、ニューシティが誕生する以前の大崎駅の乗降数は、一日平均二万人程度だったが、現在は五倍の一〇万人に増加しており、施設への集客(来街)が大きく増していることを物語っている。

これは一つには、施設内のオフィスや事業所、商業施設に就業する“昼間人口”が存在すること、もう一つは各施設への訪問者(取り引き業者)および地域住民の来街ということがあげられる。

地域施設内の就業人口は、当初は五〇〇〇人ほどだったが、現在は六〇〇〇人に増加しており、また、施設への来訪者も同数の六〇〇〇人程度で、トータルで一日当たり平均して一万二、三〇〇〇人の人がニューシティに来街している。

しかし、最近の傾向としては、やはりバブル経済の破碇の影響で、来街者と施設利用者が減少傾向にあり、今年1月の場合は前年同月比で四%、実数で六〇〇〇人もの減少だという。

「ご存知のとおり、産業不況ですから、オフィス棟に入居している企業も、以前のように残業をしなくなりましたので、その分商業ゾーンへの人の流れもストップすることになったわけです。特に、今年に入ってはそういう傾向が強くなってきており、飲食施設などへの客足は落ちています」(大崎再開発ビル㈱取締役営業部長三浦格氏)。

残業がなくなれば、勤め人は節約ムードもあって、ストレートに家路に着くことになる。寄り道していた同僚との一杯も、残業時の夜食も敬遠されることになる。家庭での鍋需要、味噌需要の増加は、外食をしなくなった検約、節約の証明だという。

飲食施設は、二六店舗あり、二、三階に入居している。業態は和洋中はもちろんのこと、ファーストフードから高級日本料理までをミックスしニーズに対応している。

これらの店舗規模は大は六〇〇㎡から、小は四三㎡クラスまでとさまざまで、資本力や業態によって、おのずと店舗スケールが決まっている。二六店舗の客席は全部で一二一〇席。就業人口六〇〇〇人を考えれば、五回転で全員が店を利用したということになるのだが、現実はそうはならない。仮に就業人口の二割、来街者の二割が利用したとすれば、この実数は四八〇〇人で、一日四回転という数字になる。あり得りない数字ではないが、実際はどうか。

再開発ビルのデータによると、飲食二六店舗の平均月商は二億三〇〇〇万円で、平均客単価は一三〇〇円の営業実績を出している。ファミリーレストラン並の客単価というわけであるが、そば、うどん、ラーメン、喫茶、ファーストフードの業態から、高級日本料理、寿司、天ぷら、ステーキまでの客単価を平均化したもので、これらの数字を基数に試算してみると、一ヵ月(三〇日)当たりの店舗利用者の総和は約一七万七〇〇〇人になる。

これを一日平均に換算すると五九〇〇人、仮設の四回転を上回って五回転になるわけだが、しかし朝、昼、夜の営業形態、少なくともほとんどの店が昼・夜の営業形態という状況からみると、昼間の時間帯(午前11時から午後3~4時頃)で三回転、夜(5時以降、ラストオーダーの9時30分頃まで)の時間帯で二回転ということになり、“一般的”でみれば、集客力に一、二回転分の余力を残しているという印象も受ける。

◆実利的販促・イベントで不振カバー

「確かに平均的にみても、六回転くらいはしなくてはならないといえますが、ご存知のような消費の低迷で客足が落ちていますから、大変に難しい状況にもなるわけです。それに平均してみますと、客単価も一〇〇円くらいダウンしていますから、今きてくださっているお客様も、消費を抑えていらっしゃるという結果です」(前出・三浦部長)。

企業の残業がなくなってオフィスワーカー達は自宅に直行する。節約スローガンで交際費も大幅にカットされる。構造的に客数、客単価がダウンする図式になっているのだが、もう一つには、やはり女性客が敏感に反応している面もあるのだという。

「まず目立っていえることは、一人二万も三万もする高級料理店はダメということですが、消費需要の強かった女性層が一〇〇円でも安くなるようにという考えから、スーパーの弁当に流れているケースが多いということです」(三浦部長)。

もちろん、全部が全部営業が落ち込んでいるわけではない。なかには坪二万円や四万円を売上げている店もあるという。店の業態や営業意欲という点も不可欠で、手をこまねいていては、営業不振を脱却することはできない。

「大変に厳しい状況にあるのは確かですが、こういうときこそ、施設が一体となって販促やイベントを仕掛け、地域からも多くの人を呼びこまないといけないと考えているんですが、それがまた各店の思惑、方針、体力差などがありまして、なかなかまとまりにくい点もあるのです。一つには、イベントを打っても、たとえば夏場の盆踊りなどの企画では、地域の人達が多く来街してくれるのですが、必ずしも施設利用(飲食行動)には結びついていないということもあるのです。ですから、販促イベント活動としても、スタンプラリーで食事券を出すとか、もっと実利的な面を打ち出していきたいと考えているところです」(三浦部長)。

・一号館‐‐オフィス棟(二〇階建)

・二号館‐‐ホテル棟(一三階建、四二三室)

・三号館‐‐オフィス棟(二一階建)

・四号館‐‐オフィス棟(二〇階建)

・五号館‐‐商業・店舗棟(三階建)

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