うまいぞ!地の野菜(41)徳島県現地ルポおもしろ野菜発見「源平いも」

2002.06.03 253号 13面

標高一九五五mの剣山に連なる山並みの中腹を這うように続く道。予讃線阿波池田から小歩危(こぼけ)、大歩危(おおぼけ)を通り、車で高度を上げながら走ること約一時間二〇分。たどり着いた村が東祖谷(ひがしいや)。その昔、平家の落人が逃げのび住み着いたとされる地である。

この村では明治の初め、日本へ伝わった原種に近いジャガ芋が作り続けられている。

地元では「源平いも(ごうしゅいも)」「ごうしも」「おくいも」「ほどいも」などと呼ぶ小さなジャガ芋。現在では一般的な品種改良された男爵やメークインとは異なり、昔ながらの栽培法を踏襲したものだ。

平成11年、JA阿波みよしは、この地にだけ生育する地域限定作物、ごうしゅいもの商品化にあたり商品名を模索中、都を追われ、祖谷地方に落ち延びた平家の一族にオーバーラップさせ、赤芋を平家、白芋を源氏にみたて、「源平いも」と命名、販売開始した。

原種に近いため大きくは育たず、平均して卵大。小さなものはムカゴ大である。

「これだけ小さいとくず芋と間違われるが、源平いもはもともとが小さい芋と説明してやっと分かってもらえるんですよ」と笑うのはJA阿波みよし東支所長の小西文夫氏。聞くところによると小西行長の末裔とか。

歴史にロマンを求めた紅白のジャガ芋、源平いもはどうして栽培されているのか。

この村で生まれ育った中山ユキ子さんによると、3月に自家採取の種芋を植え付ける。5月下旬~6月上旬の開花期になると、いっせいに赤芋は紫、白芋は白の花を付けて咲きそろう。

9月になると源平いも特有の二~三mにもなる長い茎(この地ではツルという)は立ち枯れ、いよいよ収穫期。

一本に七~八個の芋がつき、一本ずつていねいに掘り上げ、陽に当てないよう納屋か芋壺に保存し追熟させ、春先まで冬の食料とする。

「長く保存することで熟成し、糖度も八~九度くらいまで上がるんです。身も締まり、一度食べるとこの味は忘れられません」というユキ子さん。子供のころから食べ慣れた味を、今でも守り続ける。

9月の皮が軟らかい新ジャガは、鶏肉と合わせて炊いたり、串に刺して焼き上げ、味噌味で食べる「ねこまわし」、また正月料理には白と赤の子芋と里芋を椀種に祖谷地方に昔から伝わる硬めの岩豆腐をのせ、汁を張ったものも欠かせない。

そろそろ在庫が尽き、甘みも増した春になると、切り干しサツマ芋、小豆と合わせて炊いたものをお茶請けにするなど、保存期間で変わる味わいを上手に生かしている。

「源平いもは収量も少なく地域内消費に終わっていたが、今後は味、形状、色など源平いも委員会が認定したものだけを地域特産物として普及していきたい」と意気込みをみせる岡田純JA阿波みよし営業部長。

大量生産の流れの中、かたくなに土地の味を守る生産者。大量消費で品質が変わることがないよう祈りたい。

■生産者=中山肇・ユキ子(徳島県東祖谷山村字中上)

■販売者=JA阿波みよし東祖谷支所(徳島県三好郡東祖谷山村京上一五一、電話0883・88・2008、FAX088 3・88・2155)

■価格=9月~翌年3月の出荷。宅配価格は一キログラム五〇〇円。一箱白と赤三キログラム単位で送料は別途。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら