中華料理特集:主力3社中華メニュー戦略=暖中カンパニー

2003.05.05 268号 4面

◆創業の経緯

(株)暖中カンパニーの母体は、(株)タスコシステムである。同社の高田貴富代表取締役は札幌市出身で、(株)暖中カンパニーの高田憲招代表取締役((株)タスコシステム専務取締役)の実兄にあたる。そもそも高田兄弟は、昭和60年にススキノで「ラップ」というカフェバーを手掛けていた。それから外食ビジネスで成功するまでに二つの転機があった。

第一の転機は平成7年。バブル崩壊後のススキノは、北海道拓殖銀行の破たんで景気は冷え込み、北の歓楽街には突風が吹き荒れていた。居酒屋など数店舗を展開していた高田兄弟は、そんな夜のススキノから、昼のオフィス街へとその営業の矛先を変更した。

手始めは北海道庁前にオープンした北前そば「高田屋」だ。昼間はランチでそば、夜はそばで軽く一杯、という二毛作ビジネスに乗り出した。これが大ヒットとなった。

夜のお父さんから昼間のお父さんをターゲットとしオフィス街へ進出。粗利益の高いそばと、従来培ってきたアルコールを提供することで、高田屋はわずか一年で市内に五店舗を出店。その後「升屋」「とり鉄」と拡大成長の基盤を構築した。

そして平成9年、中国家郷采「暖中」の一号店がオープン。そして第二の転機である平成12年、中華ファミリーレストラン(株)オオカを傘下に収め、同社の郊外型立地とノウハウを生かし、暖中をまたたく間にチェーン展開した。暖中は現在、(株)暖中カンパニーとして、昨年2月に社名変更し、高田憲招氏代表取締役を中心に積極的な展開を図っている。

◆事業の特徴

(株)タスコシステムは、ススキノの繁華街から「高田屋」でビジネス街へ、そして「暖中」で郊外へと進出してきた。成功のポントは「コミュニケーション」へのこだわりである。

ファミリーレストランでは普通『僕はハンバーグ』『私はカレー』と、家族それぞれがオーダーしたものを食べて終わるケースが多い。ゆったりしたいと思っても、子ども連れだと周囲が気になる。だが、居酒屋ではオーダーした料理を皆ではしをつつきながら、くつろいで楽しめる。やはり外食には会話が弾む空間演出が欠かせない。

その居酒屋のノウハウを暖中にも応用した。周囲を気にせず、ゆったりと家族団らんのひとときを過ごしてもらうため「ジャングルジム」と名付けた半個室を設計した。それは中の円卓を囲みながら格子越しににぎわいも堪能できる趣向である。また、料理は一人二品以上オーダーできるようにポーションと価格を半分にしたハーフメニューを開発した。

それらの成功を軸に本格的に関東へ進出した。

◆今後の戦略

暖中は現在、直営店四五店舗、FC三八店舗。今後三〇〇店舗の出店を目指している。

「各店が競合せず着実に成長するためには、ある程度ゴールを決めて展開するのが重要。店舗間の重なる商圏が六%以内と想定した三〇〇店舗が一つの目安です」と高田憲招氏。

しかし課題もある。厨房の人材確保と技術育成である。現在の急成長は吸収合併のスケールメリットが支える側面がある。極端にいえば、昨日までハンバーグを作っていた料理人に、明日から中華を作ってくれとお願いすることになる。それぞれ違った企業文化で育ったスタッフに対し、暖中カンパニーの理念と方向性を理解させるためには、教育の充実が不可欠という。

現在、人材の教育システム、スキルを正当に評価する報酬システムなど、企業育成の土台づくりも整ってきた。さらに、客単価一三〇〇~三〇〇〇円のアップグレードの業態開発も予定している。

そんな暖中の今後のキーワードは、三つのコミュニケーションだ。「家族の温かいコミュニティー」「スタッフ相互の人間味あふれるコミュニケーション」、そして三つめが「本部と現場とのコミュニケーション」である。

これらを合い言葉に札幌からの全国制覇を目指す。

◆会社概要

(株)暖中カンパニー/本社所在地=東京都中央区銀座三‐九‐一一、紙パルプ会館/代表取締役会長=高田貴富/設立=平成9年12月/資本金=一〇〇〇万円/従業員=一二〇人

(株)タスコシステム/本社所在地=札幌市中央区北二条西三丁目一番地、21札幌扶養ビル/代表取締役社長=高田貴富/創業=昭和61年/資本金=一一億五四七七万五〇〇〇円/従業員=四九三人

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