この一品が客を呼ぶ中華料理編・大阪:「まるい飯店」マーボー天津飯セット

2004.07.05 287号 9面

大衆中華は、いつの時代にも愛される存在。そのスタンスを三〇年間守り続けているのが、大阪市北区の「まるい飯店」だ。ランチタイムには、気軽に食べられるセットメニューが人気だが、なかでも特徴のあるのが「マーボー天津飯セット」(ミニラーメン付き七〇〇円)。二種類のおいしさを楽しむ、満腹メニューだ。

創業は昭和49年。スタート時から“うまい・安い”の大衆中華一筋の店として、学生やサラリーマンの支持を得てきた。当時は、ラーメン、餃子、ご飯が各一〇〇円で、「三〇〇円でお腹がいっぱいになる店」だったという。

しかし、平成11年、大阪駅前の再開発のために、オフィスビルに移転。その後はOL客もつかみ、ランチタイムには、丼のセットメニューが平均一〇〇食売れる人気店になった。ランチの丼は、ミニラーメン付きでボリュームたっぷり。丼は各種あるが、好評の「マーボー天津飯」は、ズバリ、マーボーのピリ辛と卵の風味を合わせたもの。一〇年ほど前に、「一緒に食べてみたい」という、まかないの発想から誕生したという。

大盛りのご飯を卵で包み、上に掛けたあんには、エビやタケノコ、ニンジン、豚ミンチなどの具材がたっぷり。あんのベースは鶏がらスープで、醤油や砂糖、豆板醤、甜麺醤などで調味している。

「辛さの調節も、嫌いな具材のチェンジもOK」と、店主の福壽義人さんと奥さんの啓子さん。わがままを聞いてもらえる居心地の良さと、客から「お父さん、お母さん」と慕われる二人の人柄も、この店の魅力といえる。

新しい客層を開拓したが、ビル内では閉店時間が規制される。そこで今年の1月、歓楽街にある現在地に二回目の移転をした。営業時間は融通がきくようになったが、客層がガラリと変わり、今、新たな転機を迎えている。目標は、なじみ客と新しい客が集える店づくり。庶民の味方“安くてうまい店”の今後の健闘が楽しみだ。

◆まるい飯店(大阪市北区兎我野町一二‐一五、丸一ホテル二階、電話06・6363・2652)営業時間=午前11時30分~午後2時、6時~午前0時、不定休/席数=二五席

◆食材の決め手 メーカー・日盛酒業有限公司、輸入取り扱い・興南貿易(株)「紹興老酒(5年物)」

マーボー天津飯のあんの仕上げに使用するのが、伝統的な手法で作られた「紹興老酒」の五年物。

「これを加えることで、あんにコクとまろみが出る」と、福壽さん。調理の最後に、老酒と酢をひと振りして味を調える。

このブランドは、一般にはあまり流通していないというが、三年や一〇年物などと比べて、味や価格的にも納得できる五年物に決めているそう。この店ではカメで仕入れて、一升びんに小分けしながら利用している。

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