地域ルポ 吉祥寺(東京・武蔵野) サンロード中心に飲食ゾーン 新規出店は東急裏に
吉祥寺の街は、JRの駅を中心軸に北口、南口に分かれて街の発展をみせているが、商業の中心ゾーンはあくまでも北口の「サンロード」をメインとする商店街だ。
サンロードは全長二〇〇mほどのアーケードで、物販、飲食、アミューズメントなど多様な商業集積をみせている。
北口はこの通りを軸にして西方向に「ダイヤ街チェリナード」「元町通り」「ペニレーン」などの商店街を形成している。
また、サンロードと平行する形で東側に吉祥寺大通りがあり、この通りには近鉄百貨店と西友ストアが展開する。
東側は「東急大通り」(公園通り)で、通り名のとおり東急百貨店ほか、吉祥寺第一ホテルが存在する。
そして、この通りを起点にして、西側方向に「東急通り」か「中道通り」が展開しており、独自の賑わいをみせている。
また、この二つを南北に結ぶ形で、いくつかの裏通りが伸びており、しゃれたブティックや雑貨店、飲食店が年を追って建ち並んできている。
これらの地域は通称「東急裏通り」ともいわれているが、吉祥寺の中心ゾーンはすでに飽和状態であるだけに、新規出店はこのエリアに集中してきているという印象を受ける。
南口は駅ビル「ロンロン」の近接地に「井の頭通り」が東西に走っており、南口正面を出た通り沿いに丸井が展開している。
この丸井の西側の角から南方向に伸びているのが“ミニ公園通り”(七井橋通り)で、突き当たりが井の頭公園になっている。
井の頭通りから公園までは約一〇〇mくらい。この間に小さな飲食店や衣料、雑貨店、花屋、ギャラリーなどが点在しており、道幅が二mほどと狭いこともあって、縁日的な風情を呈しており、公園に遊びに行く人、通りをブラブラ歩きする人などで、とくに休日には人の流れが飽和状態になるほどの混み方をする。
しかし、南口で昼夜の賑わいをみせているのは、駅ビルに接した形で井の頭通りと平行して、といっても西の端は井の頭通りにつながっているのだが、東西一二〇mほどの“南口商店街”(パークロード)で、このエリアにはハンバーガーチェーンや回転すし、ラーメン店、居酒屋、レストランなど多くの飲食店を集積しており、南口最大の賑わいをみせている。
だが、この通りは、一車線一方通行の狭い道路でありながらバスの進入道路でもあるので、車の往来に気をつけなくてはならず、北口の商業ゾーンと異なって通りの往来は快適ではない。
加えて、この通りは前述したように井の頭通りが至近距離にあるので、立地的には面としての拡がりは不可能で、将来とも現在以上の商業集積は考えられない。
また、丸井側の“商業ゾーン”も、周辺が住宅地であるほか、井の頭公園が存在するので面的に拡がっていくのは不可能といえる。
「面的な拡がりで可能性のある地域といいますと、東急の裏側地域、この地域には三、四年前から飲食や衣料、雑貨などの店舗が進出してきているんですが、西側方向には何んの障害もありませんから、土地利用によっては多様な展開が可能だと思います。
もう一つは、吉祥寺大通りに面する近鉄百貨店の裏側地域です。東急と同じで通りの後方になるわけですが、この地域は一部『吉祥寺銀座』と称して、名前のイメージとは異なって、キャバクラやスナック、バー、レジャーホテルなどの“ピンクゾーン”なんですが、これがより健全な状態になって、明るく健康的な飲食、レジャーゾーンになれば、他の飲食、小売店舗の進出も誘発することになって、面としての発展も大いに可能性があると思うのです。
残念ながらいまはまだ“大人の街”としての存在で、そういった開発、発展状況にはありませんけど、将来的にみれば大局的な街づくりの問題として、大いに可能性があると思うのです」と語るのは、「週刊きちじょうじ」を発行する大橋一範編集長。
商店街や通りが多く存在する割には、吉祥寺の街は狭隘だ。結局のところは、駅を軸に、北側に五日市街道、南側に井の頭通りと、この二つの道路で挟まれた半径二〇〇mほどの内側に南北の商業ゾーンが存在するわけで、南北への発展には物理的にも限界があるのだ。このため、吉祥寺の街の発展は、東西に伸びていくしか可能性はないというのが、地域商店経営者たちの共通の認識でもある。