ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(5)モモフク・サーム・バー
◆モモフク・サーム・バーMomofuku Ssam Bar
ここ数年、アメリカで流行のアジア料理。人気はすっかり定着したようだ。次々に新しい感覚のアジア料理の店がオープンしている。日中はセルフサービスのファストカジュアル、夜はフルサービスのディナー&バーに変身する「モモフク・サーム・バー」は、キムチで味付けした韓洋折衷のラップサンドを提供している。サームとは、韓国語でラップ(巻く)という意味だという。(外海君子)
オーナーシェフは、韓国系アメリカ人のデヴィッド・チャンさん。大学では比較宗教学を学んだ異才だ。日本でラーメン修業をした後の約3年前、まず「モモフク・ヌードル・バー」というラーメン店を開いた。やや太めの麺に、脂っこいスープ、ゆで卵、豚肉の塊という豪快なラーメンは、アメリカ人の味覚に合うらしく、連日賑わっている。
オーガニック料理や、ローフード(栄養価を失わないよう低温で調理する料理)、ベーガン(ベジタリアン料理)などが声高く叫ばれ、国家をあげて脂肪摂取の制限が唱えられる時勢に、コッテリした動物性脂肪が恋しくなるのも無理はないかもしれない。
そして昨年4月に「サーム・バー」を開業した。日中は、ファストカジュアルでよく見られる段階式の選択システムでお客の好みに対応している。まずは、ステップ(1)で、パンケーキ・ラップ(9ドル)、レタス(12ドル)、海苔(11ドル)、ライスボウル(9ドル)、ヌードル(9ドル)の5つの中から選ぶ。ステップ(2)では、タンパク質のメーン料理を、ポーク、チキン、ビーフ、豆腐の4つから選ぶ。最後のステップ(3)で、脇役のガルニを選ぶ。アズキ、キムチ・ピューレ、枝豆、モヤシ、椎茸、ロースト・オニオンなど10種類の具があり、その中から好きなだけ選べる。
ベジタリアンは、メーン料理に豆腐を選択し、ガルニで野菜類を選べばいい。また、人気ソースであるキムチ・ピューレについては、エビや魚などを加えたレッドタイプのほか、動物性素材を省いたホワイトタイプを用意し、ベジタリアンにも対応している。
そのほかに、「オリジナル・モモフク・サーム」(ポーク入りのラップ)や、ハンバーガー風の蒸しまん「スティームド・パン」(ポークまたはチキン)というレディーメードのメニューもある。
午前11時から午後6時にかけては、こうした軽い食事を提供するセルフサービスのファストカジュアルだが、午後6時からは、アルコール類を出すフルサービスのレストラン&バーに転換し、ビールや最近流行の日本酒、ワイン各種をゆっくり楽しませている。
日本酒はグラスが8ドルから。ワインは同じくグラスが9ドルから。メニューもスナックからデザートまで、幅広くラインアップしている。
いわゆる店舗の2毛作活用で幅広い客層を引き寄せているようだ。
●人気メニュー
1位 オリジナル・モモフク・サーム(9ドル)=ご飯、ポーク、玉ネギ、枝豆、椎茸、キムチ・ピューレをパンケーキで巻いたもの。
2位 スティームド・パン(8ドル)=ポークもしくはチキン、キュウリの漬け物の入った蒸しまん。
●事業データ
店舗名=モモフク・サーム・バー(Momofuku Ssam Bar)/所在地=207 SecondAvenue,New York,NY 10003、212-254-3500 /開業日=2006年4月/営業時間=午前11時~午後6時、6時~翌午前2時(バータイム)/坪数=1500平方フィート/客単価=約12ドル/1日来客数=約200人