関西版:泉州産水ナス みずみずしさと柔らか果肉、一ブランドを確立

2007.08.06 331号 16面

マンドリーノの人気メニュー「泉州水なすと岩がきのマリネ」に使う水ナスは、泉佐野市と貝塚市からなる大阪・泉州地区を代表する野菜で、露地物が今、最盛期を迎えている。みずみずしく軟らかい良質な水ナスを生産する、ベテラン農家の出山一郎さんを訪ねた。

出山さんは水ナスを作り始めて約10年、若いころはサラリーマンだったという。お父さんの後を継いだ格好だが、家業とはいえ、水ナスは果肉が軟らかく傷つきやすいため「最初の5年間は失敗続きだった」と話す。近所の農家に聞きながら徐々に自分なりのノウハウを確立し、今では生産者からなる「水ナス部会」の役員を務める。

出山さんの畑は約1000平方メートル。ソルゴという背の高い草が周囲を囲んでおり、これは強風によって水ナスが傷つくことを避けるための、いわば防風の役目を果たす。ただ風が入ってこないということは、かなりの気温上昇にもつながる。露地物を栽培する5~9月の中で、特に7、8月の暑い時期は成長が早いだけに、収穫量も多いうえ花芽に成長ホルモンをかけたり伸びたつるを巻き上げたりと、細かな作業がかなり多い。それを風の入らない灼熱地獄の中で、しかも腰をかがめた不安定な姿勢で行うのだから、そのつらさは半端ではない。

出山さんに「つらさが報われる時は」と尋ねると、「自宅で作るおいしい浅漬けを食べる時」と答える。水ナスはみずみずしさと軟らかな果肉が特徴だけに、用途は生食に限られており、やはり浅漬けが有名だ。しかし最近では、マンドリーノのようにサラダメニューに採用するレストランも増えており、メニュー開発も進んでいるという。

水ナスは泉州だけでなく、和歌山などでも一部栽培しているが、やはり泉州産が味や品質で一線を画している。これは先祖代々培ってきた栽培技術に加え、昼間の暑さはもとより寝苦しい夜が続く大阪南部特有の高温多湿の気候が、栽培に適するためだ。猛暑の中のつらい手入れこそ良質な水ナス作りに必須といえる。

このように一ブランドを確立した水ナスだが、大阪野菜は水ナスだけではない。「大阪イコール農業」となかなか想起しにくいものの、実は消費地に近い近郊農業産地として知られており、06年農林水産統計によると生産量が全国ベスト10に入っているものが8品目もある。うち春菊が全国第2位、フキとデラウエア3位となっているほか、伝統野菜として「天王寺蕪」や「毛馬きゅうり」など珍しい野菜も少なくない。

そうした中、JA大阪中央会では地産地消のうねりを追い風に、大阪野菜ブランド確立を目指し、外食・中食業者や加工食品メーカー、さらに仲卸や荷受け、スーパー・百貨店などとのコラボで、メニュー開発や販促活動を行っている。その一方で外食やメーカーなどはこうした動きを自社の差別化やロイヤルティ向上につなげており、まさに都市型農業振興のモデルケースとなっている。

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