飲食トレンド 二毛作経営 昼ランチサービス、夜アルコールというパターン

1993.08.16 34号 1面

バブル経済の破綻と週五日制の導入による時短や残業の廃止という厳しい経済環境で、レストランビジネスは軒並みマイナス成長を強いられている。

このため、飲食業界ではあの手この手の集客作戦を展開している。一店舗で昼夜二つの顔をもつ“二毛作経営”もその一つで、昼はランチサービス、夜はビアレストランや居酒屋といった運営形態で、店の収益向上を図っている。

二毛作経営といえば、かつて居酒屋チェーンの養老乃滝が、吉祥寺で実験的に吉野家に対抗して牛丼を導入したことがあったが、これはストアイメージとオペレーションの不備で失敗に終った。

このことは大きな教訓となっているのだが、単に新メニューを導入したとか、特化しただけでは二毛作経営とはならないということだ。

現に居酒屋や小料理屋などでは、ほとんどの場合がランチサービスを実施しているのだが売上げとしての貢献度は低く、昼、夜別個の業態という運営形態になっていない。店舗運営は、午前1時から午後2時くらいまでがランチサービス、午後5時から本業の居酒屋営業といった形態で、ランチの導入は顧客サービスと夜の営業のPRを兼ねてという意味合いが一般的だ。

つまり、昼、夜拮抗するほどの売上げのウエイトを占めて、運営システム的に二つの業態が明確に区分けされているというようにはなっていないのだ。昼夜どちらが本業であるにせよ補助、副業的な運営形態では“二毛作経営”とはいえない。

この点、サントリーとUCCのジョイントベンチャーである「プロント」(㈱ブレス‐本社東京・中央区)は、昼喫茶・スナック、夜ショットバーと完全分離のツーシフト・オペレーションで、メニュー構成はもちろんのこと、店舗の雰囲気や従業員のユニフォームもトータル的に変えてしまう。

このため、店舗で昼夜二つの顔をもつ店舗運営ということで集客力も強く、地域によっては昼夜ヒフティヒフティの業績をあげているところも多く存在する。

「最初はショットバーからの出発で、昼間の時間を使って何かをやろうということで今の形になったわけですが、メニュー単価や客単価についても、客がポケットマネーで出せる範囲ということで、いろいろとリサーチしました。それと、店舗運営については、従業員の質的サービス、ホスピタリティ、クリンリネスといったことも大事なポイントだと考えています」(㈱ブレス‐プロント、取締役店舗運営本部長木下雅雄氏)。

プロントほか、サッポロライオン「安曇野庵」、ニュートーキョー「プレナ幕張」(次号掲載)など三企業の二毛作経営をレポートする。

(2面につづく)

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