シリーズ・繁盛店の厨房(23) 厨房と客席の接点

1993.09.06 35号 10面

《まず仕入口を確かめ配膳口を定める》 厨房レイアウトを作図するとき、まず一番初めに考えるのは、食材の仕入れ口を確かめ客席方向と連携させながら配膳口を定める。

これに連動して、下膳口と食器洗浄コーナーを定めれば、後は乱れた糸がほぐれるように、もう迷うことなくレイアウトの糸口が見い出せ進行するものである。

順序としては、食材搬入口に近い所に、下処理場を、左回りの流れで、人の交差や後戻りのないように加熱コーナーを設ける。次にサービス口に近い方向に盛付けとディシュアップコーナーが接するようにすると、厨房の全貌が見えてくる。

ところで、客席と厨房との接点の第一に考えられるのはこの配膳口と下膳口である。

この配膳口は、ホテルのメーンダイニングや、一部の高級レストランの場合は、客の眼にふれないで音もなく静かに料理が運ばれてくるのが通例である。そして、この道線は食器洗浄場にも、盛付配膳方向にも自由にサービス要員が通れるように開放されているのが容認されている。

一方、小規模店の場合は、大体保健所の指導が厳しく、この部分は余義なく区分けされるのである。しばしば妥協案として腰高の自由扉をつけさせられる問題有りのコーナーでもある。

もう一つのサービス口は、厨房と客席ホールを間仕切った大小横長の開口部で、一般的にカウンターと呼んでいる部分である。

このカウンターは目的によって、オープン式と半クローズ式の二つに分けられる。厨房で利用されているカウンターはおおむね左記のように幾つかに分類することができる。

① 配膳と下膳専用開口

② 配膳と食卓と併用した二段式のもの

③ 江戸前寿司店式のもの

④ バーや酒房式のもの

⑤ 鉄板焼スタイル

⑥ カフェテリア式のもの

⑦ 食器返却専門形のもの

⑧ その他種々組み合せたもの

カウンターの内側、つまり厨房サイドには各種の機器や配膳機能を納めるので、厨房サイドの主導で構造を決定したいものである。客席側は多分に意匠的に工夫されて、しばしばそのホールの中心的ポイントとなる重要なコーナーである。

《厨房側の床はあ らかじめ低目に》 また、厨房に接している面は、防水・防火構造が要求される。したがって材質は木造やステンレス・合成樹脂張り、まれには成形材などで築造される。

店の営業的サイドから見たカウンターは、高く設定すれば客席数が増加し、客足は早くなる。その逆に低くすることによって客席数は減り、在客時間が長くなるといわれ、売上げにも影響する。

カウンター内部の床は防水処理と各種の配管類の埋設のため、どうしても一五㎝は客席側より高くなる。これの解消にはその分あらかじめ下げておくなど、施工初期から考えておかなければならない重要コーナーである。

〈厨房コンサルタント

島田 稔〉

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