厨房のウラ側チェック(37)「食品と寄生虫」(その1)

1993.10.04 37号 22面

食品、特に鮮魚の内臓附近に寄生虫が侵入しているのを、よく目撃する。厨房の刺し場を担当している調理師の多くは、この場面を簡単に想像できるだろう。

今回は、厚生省生活衛生局監修、全国食品衛生監視員協議会編集の食品苦情処理から、魚介類に寄生する寄生虫について説明したい。まず、病害を有する寄生虫を覚えてもらうことを中心に、簡潔にまとめてみる。

線虫類の中では、半透明白色で二から三㎝のヒモ状の幼虫である「アニサキス」。寄生している魚介類は、主にスルメイカ、サバ、ニシン、アンコウなどである。ヒトに摂取されると、時として胃壁に侵入し、激しい腹痛、吐き気、嘔吐を起こす。しかし、体内で数日間生存した後に死滅して、症状も治まる。

次に、茶褐色で約三㎝の体長がある「テラノーバ」。寄生している魚介類には、アンコウやタラなどがある。

次に、帯赤色で体長一・五から三㎝の「有辣顎口虫」。寄生している魚介類は、ドジョウやコイなどである。ヒトに摂取されると腹腔から内臓、皮下へ寄生し、また、脳、脊髄、眼球などに侵入する。

鉤頭虫類では、橙色で〇・六から一三㎝の体長がある「ボルボゾーマ」。寄生している魚介類は、キンメダイ、マグロ、サバ、タラ、マアジなどである。ヒトに摂取されると腸管壁に穿入し腹痛を起こす。

条虫類では、乳白色で体長〇・四㎝の「広節烈頭条虫」。同じく乳白色で体長一から五㎝の「マンソン烈頭条虫」。共に幼虫である。寄生する魚介類は、広節烈頭条虫がサケ、マスなどの内臓や筋肉、マンソン烈頭条虫がヘビやカエルなどに寄生している。ヒトに摂取されると、広節烈頭条虫が小腸に寄生し、マンソン烈頭条虫が皮下や内臓などに侵入し、ヒトに危害を及ぼす。

最後に吸虫類では、こげ茶から黄色の体長数㎜の幼虫の肝吸虫、ウエステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫、横川吸虫がある。これらが寄生している魚介類はワカサギ、コイ、フナなど、甲殻類など。サワガニなど、淡水類のアユ、コイ、フナなどである。ヒトに摂取されると、肝臓や肺臓に寄生して危害を与える。

食品衛生コンサルタント

藤 洋

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