平成フードサービス「北海道」居酒屋業に旋風、相次ぐ新規参入
ディナーレストラン(DR)の(株)聘珍樓(神奈川県横浜市、045・474・6711)と、その子会社でファミリーレストラン(FR)を手掛ける(株)平成フードサービス(神奈川県横浜市、045・474・6600)は、それぞれ居酒屋・パブ業態の新店舗をこのほど出店した。「聘珍樓」はかつて高級広東料理の老舗として隆盛を極めたが、最近は市販用レトルト食品の展開や、点心を主力とするファストフード(FF)「聘珍茶寮」を出店するなど、株式公開に向けて事業の多角化を進めている。総合外食グループを目指す同社について、業界では「ついに来たか」という感じ。食材の流通や立地戦略に課題はあるものの、その洗練された調理技術と店員マナー、サービスは脅威の的となるのは間違いない。業界に旋風を巻き起こしそうなそれらの新店舗を検証してみた。
(株)聘珍樓一〇〇%出資の子会社(株)平成フードサービスは、これまでに和食FR「濱町」を展開して来た。北海道の新鮮な魚介類と野菜を主力メニューとした同店のノウハウは一目置かれている。その背景を生かして同社は居酒屋「北海道」一号店をこのほど川崎市に出店。好調なことから既存の「濱町」二店舗を相次いで業態転換した。各社FRがディスカウント(DS)を強いられている現況のなか、同社の新業態はユニークな発想で成功している。
その要因は同社の武内智副社長の「FRのノウハウさえ確立していれば簡単」の一言に集約される。特別な戦略はなく、ただメニューを定食型から一品料理型に移行して酒の種類を増やしただけ。強いていえば、“北海道”のテーマ性をだすための改装費。それもたったの三〇〇万円。
「FRは最も効率化した業態なのです。素材、値段、サービスなら既存の居酒屋には負けない」と豪語する。確かにそうかもしれない。
一品料理が主力なためFRのような多品目で複雑な盛り付けはない。したがって食材ロス、ショートも極力省ける。同店の場合、特に厨房での効率化が図れて、以前より人件費、人員ともに一割程削減できたという。また接客マニュアルにおいても、ケータリングのタイミングなどを要するFFに比べ、居酒屋はスピードが優先されるのでフロアの店員の間では「余計な気を遣わないからかえって楽」と好評で活気がみなぎっている。
肝心な客単価も、ディナータイムは一七〇〇円から二八〇〇円にアップ。客数も土日は以前の七割程度に落ちるものの平日は二割増。トータルで目標を三割も上回る売上げを記録している。意外に女性客が増えたこと、宴会の増加が力になっているそうだ。
フードメニューは居酒屋ならではの、コーンバター(三〇〇円)煮込み(四〇〇円)などから、専門的なたらばガニの釜ゆで(一八〇〇円)まで約五〇種類。特にマグロ、カニ料理に注力、姿造りも充実している。ドリンクは北海道の地酒を中心に約三〇種。日替わりで三種類の日本酒が楽しめる「利き酒セット」が人気だ。「北海道」の展開経過について武内副社長は「今後、FRと居酒屋の中間層の業態が定着するのでは」と感想を述べている。
出店計画については「(濱町)の店舗と座席マニュアル(一一〇坪・一二四席)では広すぎるため今後は、五〇坪程度のコンパクトな店舗を設計する。当然ロードサイドから駅前出店に切り替える」としている。同社は「北海道」を近い将来、「濱町」を越えるチェーンに育てる方針だ。