特集そば・うどん 寺方蕎麦「長浦」覚書もとに再現

1994.05.23 52号 12面

先代伊藤徳義さんが、尾張一宮市の妙興寺伝来の覚書をもとに、そばの打ち方、つけ汁、仕立てを再現したのが寺方そば。これを昭和2年、向島に寺方蕎麦「長浦(ながうら)」として開店させた。

「覚書そのままの味では、商品とならないため、現代風にアレンジ」(店長・白田博文さん)して提供している。「あくまで寺方そばの土台は崩さないで、時代に合わせたオリジナルメニューを一年に一品加える」という。今では、三〇アイテムになった。

写真の「妙興寺そば」(八五〇円)は、寺方伝来禅味の代表的なもので、そばに大根をかつらむきにし、千六本に切った白鬚(しらひげ)大根、煎りゴマ、海苔を添え、つゆは、当初妙興寺に依頼してつくった伝来の味噌風味。薬味もたれに合わせ、白鬚ネギ、おろし大根とショウガ。ざるそば、もりそばには、たれに合わせ白鬚ネギ、おろし大根、本わさびの薬味がつく。

「そばは、打ちたてより一、二日寝かしたほうがうまい」というそば粉は、信州戸隠の産。端境期の3~8月までは味が落ちるが、「打ち方、こね方、水の配分」で、味をカバーできるという。

そのほか、禅味ならではの味として、そばを酒で打ち、つけ汁を酒で仕立てた「そば般若」が、一日二〇~三〇枚出る。そばに、大根おろしを深山の真白き雪に仕立てた「そば雲水」、ゴマを手打ちそばに打ち込み、つけ汁のユズの香りで楽しむ「胡麻切そば」、抹茶を打ち込んだ「茶そば」は、抹茶の香りと色合いを楽しめるよう薬味にもみじおろしを使う。また、よもぎを入れた「草切そば」「納豆そば」など価格帯は一〇〇〇円前後。

「自分だけがおいしいと思ってもダメ。お客のニーズに合ったものが必要」と、伝統の味にこだわりながらも、「梅干しそうめん」「たらこそうめん」「味噌だれうどん」などをメニューに乗せている。

客層は、昼が近隣サラリーマン、OL、タレントと常連客が多く、夜は、若い女性も増えるが、男女比六対四。集客平日二五〇人前後。週末は少し落ち、客単価一二〇〇円(昼)、一七〇〇円(夜)。目標月商八〇〇万円。二五坪四六席。スタッフは、厨房五人、ホール二~三人。

◆寺方蕎麦「長浦」=東京都千代田区赤坂、東急ホテル地下一階、Tel03・3581・0954(ほかに、浅草店、向島店、銀座店がある)

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