施設内飲食店舗シリーズ:ららぽーと、東洋一のショッピングセンター

1994.08.01 57号 6面

JR京葉線の南船橋。北口を出て徒歩三、四分のところ。ここは昭和52、53年ごろまで「船橋ヘルスセンター」があり、昭和40年代を最盛期に、一大レジャーランドとして賑わっていた場所だ。「ららぽーと」はそれをスクラップ&ビルドして、専門店、百貨店、量販店、ホテル、オフィス、文化・スポーツ施設など都市・商業施設を展開しているもので、東洋一のレジャー・ショッピングセンターとして、その存在を広くアピールしている。商圏は船橋、市川、習志野、千葉、浦安、松戸市などを対象に、商圏世帯数二〇四万世帯、商圏人口五五二万人(男性五一・六%、女性四八・四%)と巨大で、年間来場は二〇〇〇万人、売上高三八八億円(九三年度実績)、単一の商業ゾーンでは日本でも有数の集客力を誇っている。しかし、施設の大きさ、施設構成の密度から考えると、売上げ集客力共にまだまだ余力を残しているという印象だ。

「ニューファミリー対応型のワンストップショッピングセンター」「生活提案型店舗構成」「遊・飲食の賑わいとアミューズ性の追求」というのは、これら施設の基本コンセプトだが、しかし、施設規模が大きく、また面の拡がりも巨大であるので、個々の店舗はむしろ“没個性”的な存在にあり、施設の中心軸が見つからないという印象だ。

ららぽーとは「百貨店」「専門店」「量販店」の三つの大型商業施設を核としている。それだけボリュームとしての商業集積があるわけだが、その半面物理的な拡がりが強すぎて、まとまりを欠くという施設形態になっているわけだ。

アメリカの西海岸の郊外でみるSCやパワーセンターでも、たしかにスケールは大きいが、一般的には店舗(テナント)展開はワンユニット(一施設)の中でおこなわれており、フロア構成もシンプルで整合性がある。

「初めてこられるお客さんはよく迷われているようです。たしかにポイントポイントで、表示はしてあるんですが、視覚的には分かり辛い面があるということです。とくに衣料関係は店数が多いですから、ストレートにその店にくるのは大変のようです。レストランでも宴会利用の場合で、どこに店があるのか分からないので、ウロウロされていて全員が一定時間に揃うのが難しい」(ある飲食店舗の店長)。

・名称/「TOKYO‐BAYららぽーと」

・所在地/千葉県船橋市浜町二‐一‐一

・開設/ららぽーと1(昭和56年4月2日)、ららぽーと2(昭和63年3月25日)

・敷地面積/五万二〇〇〇坪

・建物面積/ららぽーと1(五万九〇〇〇坪)ららぽーと2(二万四〇〇〇坪)

・店舗面積/ららぽーと1 二万七〇〇〇坪(百貨店/地上五階、一部九階建、塔屋一階、スーパー/地上二階建、塔屋一階、オフィスビル/地下一階、地上一四階、塔屋一階)▽ららぽーと2 五八〇〇坪

・施設概要/専門店(三六〇店)/地下一階、地上四階建、塔屋一階

・施設構成/専門店(三六〇店)、百貨店(そごう)、スーパー(ダイエー)、ホテル、オフィスビル、コミュニティ施設、立体駐車場(六〇〇〇台)

・キーテナント/船橋そごう、ダイエー、ららぽーと

・年間売上高/三八八億円(九三年度実績)

・年間来場者数/二〇〇〇万人(同)

ららぽーとは敷地面積五万二〇〇〇坪。東京ドーム四個分の広さで、デベロッパーの三井不動産が事業主体となって再開発している。

昭和56年4月にオープンした「ららぽーと1」、同63年にオープンした「ららぽーと2」の二ブロックから成っており、船橋そごう、ダイエーをキーテナントに、衣料、雑貨、飲食など専門店(三六〇店)、シティホテル(二四三室)、オフィスビル(約三〇社、ビル人口一〇〇〇人)、コミュニティーセンター、文化・スポーツ(カルチャースクール、温水プール、テニスクラブ)、ビルイン映画館(八館)、ドライブイン・シアター(日本初の車で観る映画館)、スキードーム(インドアの人工降雪スキー場)、立体駐車場(六〇〇〇台を収容可能)などの多面的な施設群を展開している。

施設規模は専門店が地下一階、地上四階建、塔屋一階、百貨店地上五階建(一部九階建)、塔屋一階、量販店地上二階建、塔屋一階、オフィスビル地下一階、地上一四階建、塔屋一階で、車対応のアメリカ型に似たSCおよび“マチ機能”で、エキサイティングな施設内容をアピールしている。

ららぽーとは一つの街の出現であるし、商業施設が多く集積するということは、それだけ消費者の選択の範囲が拡がるので、利便性は増す。

規模の大きいものは必然的に大雑把になる場合が多い。問題は来街者にどう施設の存在を身近に感じさせ、インフォーメーションをキメ細かくしていくかということだろう。

ららぽーとの専門店三六〇店のうち四六店は飲食店舗だ。飲食店舗はららぽーとの一階「ハーバー通り」と、二階の「レストランプラザ」に集中しており、ファストフードをはじめ、喫茶、居酒屋、和・洋・中と全方位の業態を展開している。

ハーバー通りは、ららぽーと1とららぽーと2の間を東西約一五〇mに展開している中庭的な雰囲気の空間で、この両面に店が軒を重ねている。

西側、そごう百貨店寄りの通りはミニ公園といった趣の幅広い空間で、池や噴水を取り囲む形でベンチも置かれている。店舗も白塗りの壁面のリゾート感覚の造りで、若者のデートスポットといった雰囲気だ。

このため、店も森永ラブ、ウエンディーズ、ケンタッキーフライドチキンといったFFショップが目につく。

しかし、これら施設利用はやはり平日の集客力が落ちるという状況で、都心商業ゾーンなどと異なって、トータル的にみれば各店舗の客数は十分でない。

ショッピング客が多く来街する土・日でも、一・五倍程度の入りなので、施設全体に対し日常的および季節的にどう集客力を高めていくかが、大きな課題だ。

つまり、ららぽーとが一つの街とすれば、施設ぐるみのエキサイティングなイベント・SP戦略が不可欠であるし、地域住民参加の“まち興し”の要素などが望まれるということだ。

◆サッポロジョイプラザライオン

サッポロライオンチェーンで、ららぽーと1の二階フロア「ジョイプラザ」での出店。店舗面積三二七坪、客席数四五〇席。ららぽーとでは最大規模の店であるほか、千葉県下でも有数の大型店だ。

ライオンのビアレストランは元来が大型店が多いが、この店はショッピングセンターでの出店であることと、グループや宴会客の利用を見込んで、一回り大きい店造りとなっている。

「最新の千葉工場が近接地にありますから、出店にあたりましては工場見学者が利用できるということで、客席のキャパシティを大きく取ってあります。多目的に利用していただこうということもありまして、料理も酒のつまみからステーキ、しゃぶしゃぶ、ロブスター料理までバラエティに富んでいます」(武曽清一支配人代理)。

看板の生ビール(小四八〇円、中五九〇円、大六九〇円)を売りものにして、“食べてよし、飲んでよし”の運営形態であるということだが、メニューはつまみ類(六〇〇~一〇〇〇円前後)、料理(二〇〇〇~五〇〇〇円前後)合わせて八〇~九〇品目を揃えている。

客層は平日の昼間がショッピング客主体、夜がサラリーマンやテナントの従業員など。土・日はファミリー客や若いカップルが多くなる。

客単価は昼夜合わせて二二〇〇~二三〇〇円。平日の売上げ一二〇~一五〇万円、日曜二〇〇万円で、やはりSC内での出店だけに休日に売上げが伸びるが、過去一日四七〇万円を売ったこともある。

◆カフェエミリオロバ

アパレルメーカーのイトキンの経営。平成3年3月のオープンで、先行して出店していたファッション、洋品店の一角を改築しての営業だ。

店舗面積三五坪、客席数三二席。スイレンの絵で知られたモネの作品(モネガーデン)をイメージした店舗だけに、インテリアはエレガントでソフィスケーテッドだ。

広い空間のハーバー通りに面するガラス張りの店であるので、ニートな感性が山の手のイメージを訴求している。

この店はカフェレストランという位置づけだが、定番の主力メニューはオムライス、ハンバーグ、サンドイッチ(各五〇〇~一〇〇〇円前後)など。

これら食事メニューに加えては、デザートとしてパイ、カルト類(各四〇〇円)もあるが、夜は大きく集客力が落ちるので、ランチメニューの充実に力を入れている。

ランチメニューは定番メニューに、サラダ、コーヒー(紅茶)、ケーキを付けて九七〇円という具合で、このほか「今日のランチ」として魚、肉料理も提供している。

これらメニューのうち、自家製デミグラソース(ホイワト)のオムライスは店の看板メニューとなっており、貢献度は高い。

アルコールもあるが、仏ビール(三五〇、五〇〇円)、仏ワイン(グラス売り五〇〇円)などに限られている。

客層はヤングミセスやカップルなどが主体で幅の広さはない。客単価八〇〇円、日商一〇~一五万円(推計)。

店のコンセプトにフィットした客層のボリュームが掴み切れていないので、苦戦を強いられているという状況。

◆日本料理「五人百姓」

ハーバー通りの西詰め、そごうデパートの東側に位置する。場所的には人の往来に恵まれたところだ。

ららぽーとの飲食店舗では唯一の戸建の店で、それも一〇〇年以上も前の昔の古い農家を移築した温もりのある店だ。

京樽の経営、店舗面積一一四坪、二階建の店で客席は一階八八席、二階五〇席の計一三八席。店内は昔の農家を再現しているだけに、太い柱や梁が大きなアクセントになっており、懐しさに加え、心の落着きを感じさせる。

料理はランチメニューがお好み定食八八〇円、麦とろ定食八八〇円、天ぷら定食九七〇円、海鮮丼一二〇〇円、刺身定食一三八〇円など常時一〇品目。

ディナーメニューはジンギスカン定食一三八〇円、すき焼き定食一六八〇円、天ぷら刺身膳二二八〇円など同じく一〇品目ほか、予約による会食膳として、一五〇〇~三〇〇〇円まで五品目を提供している。

もちろん、酒のつまみ類(三八〇~八八〇円)もある。代表的なメニューは、マグロかまの刺身七八〇円、揚げだし豆腐三八〇円、あら煮六八〇円など。客層は月~土曜日(11時~15時)までランチを提供しているので、これを見当ての地域のサラリーマンやOL、ショッピング帰りの主婦やファミリー客。

夜はつまみとアルコールの運営形態になるので、会社帰りのサラリーマンやOL、カップルなど。土・日は会社が休みになるので、やはりファミリー客が主体になる。

客単価は昼一一〇〇円、夜三三〇〇円。客回転は昼一・五、夜一回転。日商五〇~六〇万円といったところ。

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