最頻度利用レストランと人気メニュー調査 若者は洋風メニューが好き
最も好きな店に全国の約半数が外食産業の約二・一%しかないFF・FRのチェーン店をあげ、中でも低価格戦略をとる「ガスト」「マクドナルド」の支持率が高い。また、好きなメニューではハンバーガーよりラーメン、スパゲティのヌードル系に軍配があがったという調査結果が、このほど「食のマーケティング研究所」(東京都文京区、03・5800・4781)の全国調査で明らかになった。4月下旬に札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡の繁華街で男女を対象に街頭面接調査を実施、一〇〇二人の有効回答の分析結果は以下のようになっており、全国ブランドの強さと若者における洋風メニュー嗜好が浮き彫りになっている。
有効回答者一〇〇二人のうち四六・四%が「最も好きな店」としてナショナルチェーンかリージョナル(地域)チェーンの店を選んでいる。調査対象都市が所在する六都道府県の一般飲食店の店舗数は一五万店強で、うち主要ファミリーレストラン(FR)チェーンと主要ファストフード(FF)チェーンの店舗数は二・一%でしかないことから考えてチェーン店一店舗当たりの集客力の大きさが浮き彫りにされた。
店舗規模(平均客席数は一般飲食店の三八席に比べて主要店は一〇五席とおよそ二・八倍)を考慮しても、チェーン店のブランドパワーの強さが際だつ結果になっている。
FRで低価格旋風を巻き起こしたすかいらーくグループのガストは今回の調査でFRの人気ナンバーワン店にランクされた。全回答者の一七・四%がFRを「最も好きな店」に挙げたが、この一七四人のうちガストは一六・一%の支持を得ている。ベスト5のうちフォルクスはダイエーグループのステーキレストランで郊外だけでなく都心部にも店舗を展開している。六位のサイゼリヤとすかいらーくグループの中華FRバーミヤンが並んでおり、ともにFRファンのうち四・六%の支持を受けている。
なお、FR業界の最先発企業であるすかいらーくは、グループ全体(すかいらーく、ガスト、バーミヤン、藍屋、ジョナサン)でFRファン一七四人のうちの三一%とおよそ三分の一(五四人)の支持を集めている。同グループは他を圧倒して人気店を展開していることになる。ロイヤルホストについては他チェーンが出店していない北海道と本拠地である福岡県が調査の対象エリアになっていることも上位入りに寄与したと思われる。
全回答者のうち一七・五%がFFを「最も好きな店」に挙げているが、このうちで高い支持率を得たブランド(屋号)は別表の通りである。いずれもナショナルチェーンが顔を揃えたが、中でもマクドナルドが四九・一%とFFファンのほぼ半数を占める人気ぶりになっている。
全国レベルで見ればモスバーガーの方が店舗数は多いが、店舗規模と立地の差が現れた形となっている。これが複数回答であれば上位五ブランドの差は一挙に縮まるはずである。
「好きなメニュー」を三アイテム挙げてもらった。(別表)洋風メニュー嗜好派が多いことが目に付く。和風メニューは丼物とそば・うどん、すしの三品目に過ぎない。次にハンバーガー、ハンバーグステーキ、ステーキと牛肉料理が三品目もランクインしており、さらに中華そば、スパゲティ、そば・うどんとヌードル系が同じく三品目ランクインしている。また、FFの代表メニューであるフライドチキンが一五位でベストテン入りを果たしていないことも、時代の変化を考えさせる物がある。
この調査のみでは断言できないが、やはり商品のライフサイクルを考えさせられる調査結果といえよう。
これまでも若者の「肉食好み」と中高年齢層の「魚介類好み」が一般的にいわれてきたが、今回の調査でもこの現象が見事に証明された。純和食(日本料理のすし、魚介料理、刺し身)については、三〇歳未満では複数回答(好きな料理三品目指定)にもかかわらず一〇%以下の支持率しかなかった。なかでも一五~一九歳に至っては、限りなくゼロに近い一・二%であった。回転ずしの展開によってすし人気は高まってきているが、その人気も児童、小・中学生までにとどまっているようである。逆に中・高年齢層の五〇歳以上ではちょうど三人に一人が魚介類の料理が好き(最も好んで食べる)と回答している。このような世代間の嗜好の差は、身体的な年齢の差による物だけではなく、生まれ育った時代の違いによる要因が大きいものといえよう。
外食企業のメニュー戦略も長期的な展望に基づかなければならない時代を迎えているのである。
牛肉料理(西洋料理のハンバーガー、ハンバーグステーキ、ビーフステーキ)については、一五~一九歳で五四%が「最も好き」と答えている。特にこう答えた同年代のうち六六%がハンバーガーを支持している。逆に五〇歳以上ではわずかに一〇%が「牛肉料理が最も好き」と答えているに過ぎない。ハンバーガーに至っては「最も好き」と回答したのはそのうちの一〇%強でしかなかった。牛肉の消費量は輸入の自由化による低価格化もあって一般家庭での消費量が増えているが、外食行動でも若い年代を中心に市場は大きく伸びそうである。
食のマーケティング研究所・取締役主幹三好隆雄
三〇歳未満ですしが好きだと答えた人はわずかに四%。これが四〇歳以上になると八〇%に達する。ハンバーガーに対しては逆に七五%と一〇%である。今やわが国には二つの民族が共存しているようなものである。
レストランはこの「象徴的な数字」を無視してはメニュー政策の根幹を立案することはできなくなっているのである。