お店招待席 タコ焼きチェーン店「蛸焼・海渡」(埼玉県・大宮市)
タコ焼きをセルフサービスでつくらせる店が若い女性の間で人気を呼んでいる。タコ焼きチェーン「蛸焼・海渡」である。同チェーンは、洋菓子やアイスなどの外食事業を幅広く手がける(株)斎藤商事(本社・埼玉県大宮市)が居酒屋FC事業として四年前に立ち上げたもので、埼玉県大宮市を拠点に五店舗展開している。タコ焼きは従来から女性に支持され易いメニューだが、同チェーンではリピーターのほとんどが男性客を連れてくるという珍しい現象を起こしている。
同店のセールスポイントは、タコ焼きをユーザーに作らせること。オーダーすると具材が入った鉄板と粉の溶け汁、京ネギ、揚げ玉、紅ショウガが出され、テーブルに設置されたガスコンロでユーザーが自ら好きなように焼く仕組みだ。お好み焼き店と似たようなものである。
“自分で作らせる”というささいなアイデアだが、これが近隣の女性の間で大ウケなのだ。理由はタコ焼きをセルフサービスで焼かせる店がまだ珍しいこと、そして思ったよりも簡単にきれいに焼けることだという。
「タコ焼きを焼くのは難しいと思われているようで、初めて来たお客はまずセルフサービスであることに驚かれます。でも焼き始めると意外と簡単にきれいに焼ける。それでまた驚きますね」と語るのは茂木英之店長。
初心者でも簡単にきれいに焼けることについては、「油が鉄板によくなじんでいるだけ。難しいと思われている方は家庭などで経験された方に多い。それらの鉄板はたまにしか使われないので焼く時に塗った油がすぐに鉄板に吸収されてしまう。だから焦げたりして上手に焼けないのです。業務用で使っている鉄板は使い込まれているから油を十分に吸収している。油を塗らなくてもきれいに焼けるくらいです」という。
そして同チェーンの珍しい傾向は、リピーターが男性を連れてくること。つまりカップルで来店する傾向だ。客層の七割弱が女性客で、そのうちの半分の女性客が男性同伴で再来店するという。
同伴するリピーターが多いことについては、「男性のため尽くしてあげたいという女心でしょう。現に女性がボーイフレンドのために焼いてあげるパターンがほとんどです。勘定まで面倒見ても割安ですから。また難しく見えるタコ焼きを上手に焼けば、料理上手の印象を与えて女性として株も上がりますからね」という。
男性と同伴するために前もって焼き方を練習する女性客もいるそうだ。
同店は居酒屋を標榜するだけに一品料理も豊富。「タコ焼きは必ず最初にオーダーされるのでもはや前菜的役割。オーダーを受けてすぐにタコ焼きを出し、焼いている間に一品料理を仕上げます。お客はタコ焼きを焼いているので待たされる感覚がなく、厨房も待たせているプレッシャーが弱いので、余裕をもってていねいに料理に取り組める」とし、一品料理の品質にも自信をのぞかせる。
女性心をたくみにつかんだ同チェーンは、今後ユーザー参加型のノウハウをさらに固めて展開を加速させる方針である。
「蛸焼・海渡」
〈創業〉一九九一年
〈所在地〉大宮市宮町店=埼玉県大宮市宮町一‐七一、048・649・0777、FC本部=埼玉県大宮市日進町二‐一三五四‐六、048・649・1122
〈営業時間〉午後5時~午後11時(土・日・祝は午前11時~午後11時)
〈店舗面積・席数〉二五坪・七〇席
〈従業員数〉正社員二人、アルバイト五人
〈客単価〉一八〇〇~二二〇〇円
〈一日来店客数〉平均一二〇人
〈平均月商〉約七〇〇万円
〈客層〉二〇~三〇歳のOL、カップル、土・日・祝はファミリー。
▽タコ焼き・550円=明石産の大ダコ入り
▽あつあつ焼き・580円=トローリとろけるチーズ入り
▽タコチョコボール・650円=チョコレートとアーモンド入りのクレープ風。生クリームにつけて食べる
▽三社焼き・600円=チーズ、ベーコン、シソ入り
▽ケンタッキー焼き・550円=カーネルおじさんも絶賛のチキン入り
月に二度は利用するというOLの横井一代さん(23、左)と斉藤美詠さん(22、右)。「タコ焼きを自分で作るのはこの店が初めて。すっかり病み付きです」という。彼女らが同店のほかによく訪れる店は、お好み焼き店、鍋料理店、焼き肉店など。「せっかちだから料理が出てくるのを待っていると暇なんです」とのことで、調理参加型の飲食店がお気に入りだそうな。
「タコ焼きを自分で作らせてくれる店は珍しいし、友達をつれてきて焼いてあげると喜ばれる。上手に焼けることをチョッピリ自慢できますし」。タコ焼き以外の一品メニューも豊富であるため、家族で来たりちょっとした宴会に使うこともしばしば。一品料理のなかでは関西風の「豚もやしせいろ」(九八〇円)がおすすめだそうだ。