外食史に残したいロングセラー探訪(77)神戸屋レストラン「パン屋さんのシチュー」
焼きたてのパンが魅力のベーカリーレストラン。その日本初として知られているのが1975年に創業した「神戸屋レストラン」だ。パンのおいしい食べ方を提案する同店は、メニュー構成も「パンに合うもの」がテーマとなっている。そのなかで1988年に開発され、今なお人気の商品が、パンで蓋をした具沢山シチュー「パン屋さんのシチュー」だ。
●商品の発祥:女性客を意識しインパクトを
今でこそ9割以上のお客がパンを注文する同店だが、オープン当初はライスの注文が多く“夕食にパンを”というコンセプトにはほど遠かったという。
(株)神戸屋レストラン企画管理部の本村忠博部長は「当時から女性客の比率が高かったので、そこを意識した商品を模索しました。料理としても重たくなく、胃に優しく、どの時間帯でも食べられることを考慮し、同時にインパクトを求めました」と語る。
そこで、たくさんの野菜が取れヘルシーなシチューに着目。味もトマトソースとホワイトソースをベースにしたクリーミーでマイルド、少しの酸味といった女性好みのテイストを意識。そして、好奇心を引く見た目のインパクトを考え、つぼ型の器の蓋をパンにし、それを崩しながら食べる同商品が誕生した。
●商品の特徴:パイ生地でなくパン生地
シチューの具材は8種類の野菜と3種類の魚介、ソーセージと盛りだくさん。しかし、一番の特徴は、ロシア料理の「つぼ焼き」などと違って、蓋にパイ生地ではなくパン生地を使用するところにある。デリケートなパン生地を使用できるのは同店ならではだろう。
「パンが焼き上がる温度とシチューの温度のバランスが難しく、生地の厚さと温度、時間の調節には試行錯誤を繰り返しました。そして、高温のオーブンで短時間で焼き上げ、おいしさを閉じ込めることに成功し、今の形になりました」と苦心を語る。
●販売実績:常連客には今なお人気商品
爆発的な伸びはないものの、シチュー類の多い現在でも、常連客の支持率は高い。「販売から3ヵ月後には、1店舗で日販30個。当時、ヒット商品で20個でしたから驚きでした」と振り返る。
パンのおいしい食べ方を提案する同店では、さまざまな場面で新しいブランドを運営している。また昨年、同商品も掲載されているレシピ本「神戸屋レストランのパンがもっと食べたくなるレシピ(主婦と生活社)」を発売するなどと新たな挑戦は広がる。
●企業データ
(株)神戸屋レストラン/関東事業本部=神奈川県海老名市杉久保南1-2-1/事業内容=ベーカリーレストラン(13店舗)、神戸屋キッチン(19店舗)をはじめ全8ブランド(48店舗)を運営。(2013年4月現在)