アポなし!新業態チェック(127)「ドトール珈琲農園」多摩堤通り店
●ドトールの新業態カフェ1号店 郊外ロードサイドに約90坪の大型独立店舗
17年の10月、ドトールコーヒーが東京・世田谷の多摩堤通りに面した敷地に新業態「ドトール珈琲農園」の1号店をオープンした。同店は、「コーヒー農園主の邸宅をイメージした店内で極上のコーヒーを味わう」というコンセプトの新業態。すでに翌11月には、同目黒区の東横線学芸大学駅前に2号店を出店している。
約90坪の独立店舗であるこの1号店は、110席を超える客席を持つ。店内は、曲面の大きな窓に面したテラスエリア、ダイニングルームをイメージしたファームエリア、豪華なソファや暖炉を配置し邸宅の居間を思わせるゴージャスエリア、ペット連れで利用できる屋外のパークエリアと、大きく四つのエリアに分けられている。一人客向けの大テーブルや独立した喫煙室、少人数向けの個室なども備えられ、さまざまな用途に対応できる大型のカフェといったスタイルだ。
メニューには4種類のブレンド珈琲が用意される。「ザ・ドトールブレンド」「ザ・クラシックブレンド」「ザ・モダンブレンド」(各540円・税込み)、そして「ザ・サードウェーブブレンド」(648円)の四つで、どれも注文後に1杯ずつサイフォンで抽出して提供。フードメニューには「農園のビーフカレー」「具だくさん!オムライス」(各1026円)「農園のシーフードパエリア」(1080円)などの他、複数のパスタやサンドイッチ類、ホットドッグもあり、「シフォンケーキ」(540円~)や「パンケーキ」(626円)のようなデザートも豊富だ。その他、モーニングメニューやアルコール類も提供する多機能な店舗となっている。
★けんじの評価 さまざまな顧客や用途に対応
このところ、ドトールは矢継ぎ早に新業態を出店している。この「ドトール珈琲農園」は、1号店を見て郊外型専用の新業態かと思っていたが、2号店からするとそうではないようだ。同社グループの日本レストランシステムが展開している「星乃珈琲店」のようなスタイルなのだろう。
この世田谷の1号店は、以前セブン&アイ・フードシステムズが既存のデニーズを「白ヤギ珈琲店」に業態転換した場所だ。東京都内では初めての出店であったが、わずか2年足らずで撤退してしまった。今回の「ドトール珈琲農園」では店舗デザインが大幅に変更されているが、建物躯体はほぼ「白ヤギ珈琲店」のものがそのまま使われているようだ。今回、同店が大きな成功を収めることができれば、両社の差は明確になる、ということだろうか。
「コメダ珈琲店」が切り開いた新たな市場に参入する外食チェーンは多い。前述の「星乃珈琲店」や「白ヤギ珈琲店」をはじめ、元すかいらーくの横川竟氏が率いる「高倉町珈琲」など、各社の方針やアプローチはさまざまだが、狙うユーザーの市場はほぼ同じだろう。トレンドを読む感覚の鋭さで先陣を切ったのが「星乃珈琲店」か。
ドトールコーヒーショップは、コーヒーとともに、磨き上げられた独自のフードメニューが魅力の店だったと思う。少なくとも筆者は、「あのメニューが食べたいからドトールに行く」というのが同店を選択する大きな理由の一つだった。同社の直近の新業態店で、どこかで見たようなアイテムが並ぶメニューブックを眺めながら、そうした同社の魅力が失われないようにと願っているのだ。
(外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)
◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。
●店舗情報
「ドトール珈琲農園」多摩堤通り店
開業=2017年10月11日/所在地=東京都世田谷区鎌田4-17-18