業界初のデジタルオンリーレストラン「チポトレ・デジタルキッチン」／COURTESY OF CHIPOTLE

ダイナ―の店頭に置かれたマリリン・モンローの人形もマスク。マスク着用はアメリカにほぼ定着した

デジタル注文の商品をピックアップするカウンター（既存店）／COURTESY OF CHIPOTLE

チポトレの特典プログラムスキャナー／COURTESY OF CHIPOTLE

カルネ・アサダ・ブリトーボウル　9＄50￠／COURTESY OF CHIPOTLE

ステーキ・ブリトー 8＄50￠／Beth Galton

子ども用のビルド・ユア・オウン・ミール4＄95￠／Beth Galton

デリバリーを楽しむ／COURTESY OF CHIPOTLE

　●業界初のデジタルオンリーレストラン登場　ゴーストキッチンの台頭

　アメリカにおけるコロナ禍は、感染者数、死者数ともに不名誉な世界一。1日の死者数が、日本と韓国の総死者数を上回る日もあり、一向に収束する様相が見られない。昨年3月半ば以降、長期間、デリバリーとテイクアウトのみの営業となるなどの外食規制で、12月半ばまでに全体の17％、11万軒以上の外食店が閉業した。

　外食の楽しみは、食べること自体だけでなく、サービスを受け、日常と異なる環境で食事を楽しむという醍醐味にある。以前は当然のように受け取っていたこのサービスが失われてしまったコロナ禍の中でのニューノーマル。この状況下、注目を浴びているのが、オンラインで注文を受け、デリバリーのみの食事を提供するゴーストキッチン。設備投資や給仕スタッフの人件費を削減できることから、ウーバーイーツ、ドアダッシュなどのデリバリーサービスに支払う配達料を差し引いても、従来の外食店よりも、まだ利幅は高いという。この分野の将来性を見越して、ペイパルの共同創業者が始めたベンチャー企業が投資する「バーチャル・キッチン」、グーグル・ベンチャーズの投資する「キッチン・ユナイテッド」、元ウーバーCEOが創設した「クラウドキッチン」などが、次々にゴーストキッチン事業に参入している。

　また、すでに厨房設備の整った既存の外食店を利用して、新しくオンラインサービスを始めたところも出ている。例えば、「チリズ」や「マジアノズ」の厨房を活用したデリバリーオンリーの「ジャスト・ウィングズ」。店名通り、フィンガーフードのチキン・ウィングズ（鶏の手羽先）メニューをオンライン注文で受けて提供する。1000店の厨房を使って、1年目にして1億5000万ドルの売上げを予想している。「アップルビーズ」でも、700店の厨房を活用した「ネイバフッド・ウィングズ」が、チキン・ウィングズのほか、マカロニ＆チーズやプレッツェルなどのデリバリーオンリーのサービスを提供。どちらもオンラインで注文する。

　デジタル注文で人気のメニューは、コンフォートフードやシェアできる料理。やはり家庭で食べるからには、気負いせずに食べられる大衆料理が好まれるのだろう。

　そんな中、メキシコ料理専門のファストカジュアル・チェーン「チポトレ」が、ニューヨーク州ハイランド・フォールズに業界初のデジタルオンリーのレストラン「チポトレ・デジタルキッチン」をオープン。同店は、ダイニングスペースもなければ、注文を受けるサービスラインもない。チポトレのウエブサイトかアプリ、もしくは第三者のデリバリーパートナーを通して注文をし、ロビーで受け取る。大口の注文も受け付けている。

　フルサイズのレストランの開店費用が高くつく都会を念頭に置いたコンセプトではあるが、デジタルキッチン第1号店のロケーションは、ハドソン河上流にある田舎。約5000人が学ぶウエストポイント陸軍士官学校があり、士官候補生たちを視野に入れている。

　長引くコロナ禍の影響を受け、売上げ確保もしくは生き残りをかけて、外食産業のオペレーションは変貌しつつある。