メニュートレンド:究極の鱧(ハモ)だしが生んだおでんのネクストステージ
ちょい足しおでん 「明太バター」は「明太子チーズ餅」や「明太子パスタ」をヒントにちくわぶや結び白滝などと合わせた。「ブルーチーズ」と大根の組み合わせは矢ヶ崎さんが修業時代に食べたまかないの「大根シチュー」がネタ元。コショウをたっぷりかけて食べるとカルボナーラ風の味に。「ジェノベーゼ」は写真の結び白滝のほかに豆腐や厚揚げなど豆腐系との相性がよい
何でもかんでも値上がりしている昨今、大衆価格を維持する切り札として提供店がじわり増えている「おでん」。とはいえ昔ながらの定番ダネが中心で脇役に甘んじている店が大半だ。そんな中、おでんをメニューのド真ん中に据えて、既成概念のはるか上をいくサプライズ感満載の商品提案で注目を集めているのが東京・西新宿の「ちょいおでん」新宿本店だ。
●炊くだけがおでんじゃない!つゆかけスタイルの提案 おでんも「ちょい足し」で多国籍に!?
メニュー表で目を引くのが「変わりおでん」の文字。そこには「コロッケ」「ガーリックトースト」など、おでんと関係なさそうなメニューが並ぶ。一般的におでんとは鍋に練り物などを入れてコトコトと煮込んだ料理。その定義どおり煮込んでしまえば、コロッケはぐずぐずに崩れてしまうし、ガーリックトーストなんかニンニクやバターがだしに溶け出して他の食材に移ってしまう。いったいどうやっておでんとして成立させるのか。業態開発を担当した矢ヶ崎峰和さんはこう説明する。
「だしで煮込むのではなく、スープ(つゆ)として注ぐ使い方を考案したことでブレークスルーを起こせました」。コロッケは立ち食いそば店の「コロッケそば」、ガーリックトーストは洋食店が「コンソメスープ」の上にカリカリのトーストを浮かばせるのをヒントに商品化したという。「なじみのある料理」を、おでんに変換していくという柔軟な発想力に目からうろこの思いだ。
こうした背景に「どんな食材にも合う究極のだしを作ろうと研究を重ね、高級魚のハモからとったハモだしを開発できたことが大きい」と矢ヶ崎さん。味見するとうまみは濃厚ながら魚臭さはなく酸味も穏やか。素材の味を邪魔することなくうまみを増幅してくれる。
他方、大根やちくわぶなど定番おでんももちろん健在…なのだが、それで終わらないのが同店のユニークなところ。これら定番を対象に「ちょい足し」なるソース3種を用意。「明太バター」「ブルーチーズ」「ジェノベーゼ」とパスタソースを思わせるラインアップが驚きだ。一口食べると味変の域をはるかに超える変貌ぶりで、一度体験した客が未体験の知人を誘ってリピート来店するという好循環が生まれているという。
同店にはフランチャイズ加盟の問い合わせも多く、取材時点で4店舗体制。今秋には大阪にも進出予定で、おでん酒場の新たな潮流を生み出しそうな予感だ。
●店舗情報
「ちょいおでん 新宿本店」
所在地=東京都新宿区西新宿7-3-1 三光パークビル1階/開業=2024年7月/坪数・席数=27坪・60席/営業時間=15時~翌2時。無休/平均客単価=2700~2800円
●愛用食材・資材
「ハリッサ」 ユウキ食品(東京都調布市)
おでんにも合うエスニック風味
お通しの代わりに提供する調味料も工夫を凝らして、おでんの「味変」を提案。「おでんがエスニック料理にもなる楽しさを体験してほしい」と矢ヶ崎さんが愛用するのが、チュニジア発祥の辛味調味料「ハリッサ」だ。唐辛子、ニンニクをベースにカレーを彷彿させるコリアンダーの香りに親近感も生まれる。
規格=110g