業界TOPICS:デニーズ、ファミレスラーメン2000円超え 飯田商店と連携で想定5割増
ラーメンは一杯の「早い・安い・うまい」に集中するあまり、接客サービスやバラエティーに欠けるきらいがある。「1000円の壁」は自ら招いた功罪であり、客層を狭める一因とも指摘される。そんな呪縛を打ち破ったのが「デニーズ」の本気ラーメンだ。
デニーズ(317店舗)は「日本一予約が取れない」と評される「飯田商店」飯田将太店主監修の「味噌らぁ麺~五重の味噌」を開発。年初の期間限定2ヵ月間で想定より約5割増の30万食以上(平均1店舗日販約16食)を販売した。その本格的な味覚は多くのメディアで称賛されたが、業界識者をうならせたのは「2000円超え」と「女性客の支持」の繁盛ぶりだ。
単品1419円(税込み)、ミニご飯付き1529円(同)、お薦めセット2013円(同)の3品のうち、最高値のセットが注文の4割を占め、ファミレスにおけるラーメンセットの可能性を見せつけた。と同時にラーメンを値上げするヒントを示した。
「販売数は通常の期間限定メニューに比べ約2倍。リピーターも多く専門店レベルの本格的な味が評価された」と誇るのは福岡勘平・商品部副部長。「子どもや仲間とシェアする女性客が目立ち、ドリンクやデザートの追加も好調」と明かし、「子連れ歓迎かつ気楽に滞在できるファミレスの利点が、ラーメン店に行きづらかった客層の潜在欲求を喚起。かたや飯田商店の話題性によりラーメンファンも多数来店。新規顧客の開拓が進んだ」と説く。
デニーズはファミレスラーメンの先駆け。1988年の発売後、現在では「胡麻香る四川風担々麺」(税込み1045円)を年間約80万食、「昔ながらの中華麺」(同946円)を年間約40万食の定番に育て上げるなど、ラーメンの開発に注力してきた。だが、洋食を中心に多数のメニューを扱うファミレスの厨房ではラーメンの本格調理に限界がある。
その課題に挑戦したのが学生時代にデニーズで働いていた飯田将太店主だ。現場を熟知する手腕を発揮し、現状のオペレーションを尊重した本格調理を創造した。とりわけオーブンを活用した具材の焼成が秀逸。強火の中華鍋で炒める熟練技術を再現した。
「本企画は当社の本気が伝われば成功。ラーメンは最も本気を伝えやすい料理だと思う。デニーズの本気を示す象徴として同様の企画を推進する」(福岡氏)。
飯田商店の話題性が際立つメニュー戦略に見えるが、評価と実績、思い入れを踏まえると、今後のラーメンのあり方に一石を投じる試金石といえそうだ。