海外通信 外食ビジネスの新発想(101)日本産ブリのさらなる可能性
●外食から中食への拡大に期待
日本産水産品の中で、長年にわたり対米輸出量首位を維持しているのがブリである。現在、九州・四国を中心に養殖が盛んだが、その背景には養殖技術の進展がある。ブリ養殖は1920年代に確立され、1950年代以降国内で普及、1980年代には米国向け輸出が本格化した。現在では日本酒を上回る規模の輸出品目へと成長し、日本を代表する水産輸出商材の一つとなっている。
米国では寿司レストランを中心にブリ(ハマチ)は広く浸透しており、メニューに欠かせない存在となっている。近年は西洋系レストランでも取り扱いが増え、「ハマチ・クルード」といった形で提供されるなど、和食の枠を超えた国際的食材として定着しつつある。
一方で、中食・内食(小売)分野に目を向けると、採用は依然として限定的だ。米国では寿司は外食メニューとしては定番化しているものの、家庭の食卓に魚料理が登場する機会はなお、限られている。
外食での高い人気が小売に広がりにくい背景には、外食向けに最適化された価格帯や取扱ロット、フィレサイズが家庭消費に適合しにくいことに加え、家庭内での調理方法や食べ方のシーンが十分に浸透していない点があるとみられる。ただし、近年の健康志向の高まりを背景に、家庭での魚食需要には拡大余地があるとみられ、新たな成長市場として期待される。
こうした中食・内食市場の開拓に取り組んでいるのが、ニューヨークを拠点とするCanvas Creative Group(代表:釣島健太郎氏)である。同社は日本産食材の現地展開に関する知見を生かし、近年はブリのリテール市場向けプロモーションを、戦略立案から実行まで一体的に推進している。
具体的には、JETROニューヨークや現地の輸入卸業者と連携し、スーパーや大学、病院内カフェテリア、寿司コーナーなどに対して直接提案型の販促を展開。これまでニューヨーク近郊で100店舗以上の寿司コーナーにおいてプロモーションを実施してきた。中食市場ではキハダマグロやサーモンが主流を占める中、ブリを新たに採用する売場は着実に増加している。
また、小売店では試食販売を通じた認知拡大にも注力している。寿司店では一般的な食材である一方、家庭消費においては未経験の消費者も多く、「初めて食べたがおいしい」といった反応が購買につながるケースもみられる。こうした取り組みを経て、売場での定番化が進み、ニューヨーク市内および周辺地域での販売拡大につながっている。
釣島氏は「外食での成功がそのまま小売での販売につながるわけではない。価格設計や売場づくり、消費者理解の促進など、多面的な取り組みが不可欠」と指摘する。
米国における日本産品の流通は依然として限定的であり、成長余地は大きい。同社ではブリに加え、コメや酒、日本茶などのプロモーションも展開しており、日本産食品全体のさらなる浸透が期待される。
(井澤歩)
取材協力:Canvas Creative Group (https://www.canvas-cg.com)














