デリカの「今」がわかる中食通信:売れてるご当地デリカ惣菜弁当100選(9)福岡県・全国「明治屋」
◆「トライアル」躍進をリード 職人品質のコモディティー化を推進
福岡市を拠点に破竹の勢いで全国展開するディスカウントストア「トライアル」(343店舗)。その食部門を担うグループ会社が明治屋だ。同社は「こはく本舗」のブランドでトライアルの惣菜・弁当を開発・販売しているが、本来は料亭やレストランを手掛ける外食企業。現在も仏料理「颯香亭」(ミシュラン一つ星)など計10店舗を有する。そのリソースを生かし「職人品質のコモディティー化」を推進。総勢50人の専門料理人がデリカ部門の商品開発を競い合っている。目新しさよりも「基本的なおいしさ」を重視しており、定番品のブラッシュアップをするために、「調理の創造」と「オペレーションの改善」に取り組んでいる。まさにデリカの王道を突き進んでいる。そんな明治屋が誇る定番の逸品をご紹介。
●圧倒的コスパ「カツ重」年間1000万食以上
「ロースかつ重」299円(税込み)
「トライアルは信用できる!」の象徴
全店の販売実績は年間1000万食を突破。デリカ売上げの約8%を占めるダントツ1位の看板商品。一見、普通のかつ丼だが、食べれば本格的な調理を実感する。デリカでかつ丼(煮)を調理する場合、スチコンやホットプレートを使えば効率的だが、半面、卵が乾きやすい弱点もある。それに我慢できない明治屋は、理想的な焼成機器を独自開発。全店の厨房に設置し、温度・時間・蒸気の最適化・標準化を図り、専門店に匹敵するおいしさを実現した。黄身と白身が絶妙に分離したトロトロの仕上がりも必見。調理の本質にトコトンこだわった本品は、「トライアルは信用できる!」の象徴と化している。一方、焼成機器は卵焼きやギョウザなどにも活用されており、「多目的焼き機」と名を改めている。
POINT:専用機器を開発し理想を実現
●トリプル・タンブリングで風味が格別に
「生姜醤油こだわりだし唐揚げ」 189円(税込み)/100g当たり
全店の販売実績は600万パックを突破。毎年、鶏肉原料や調味素材の品質を変えることなく、調理方法の創造(リニューアル)により、絶妙なブラッシュアップを演出している。今年のポイントは「トリプル・タンブリング」。鶏肉を3段階に分けて漬け込む調味開発だ。(1)鰹節・昆布・イワシ節のだし(2)ニンニク醤油の調味液(3)ショウガの調味液、という3段階(計約30分)のタンブリングにより唐揚げの風味が格別にアップ。これまで育んできた独自の味覚を守りつつ、新たなおいしさを加味した。昨年まで4年連続で「からあげグランプリ金賞」を獲得したが、本年は最高金賞を受賞する価値があるだろう。
POINT:基本厳守と調理創造を両立
●女子力が詰まった野菜優先セット
「甘辛サラダチキン丼&焼き野菜サラダ」 462円(税込み)
「焼き野菜のサラダとヘルシーな丼」がコンセプト。1つの商品で2種類の弁当が楽しめる。野菜をたっぷり使用し「ご飯メインではなく野菜を食べたい」という女性向けに開発した。サラダチキンは自社工場で低温真空調理し、焼き野菜は新鮮な野菜を使用して、食べたときの最適な硬さや色合いが担保できるように調整。ドレッシングは女性社員の意見を取り入れて選定した。ワンコインで購入できるコスパのよさも売り。女子力が詰まったミニ弁セット。
POINT:1つの商品で2種類の弁当
●洗練された3重構造の味覚設計
「ベイクド&レアチーズケーキ」 699円(税込み)
爽やかなレアチーズケーキ、濃厚なベイクドチーズケーキ、さっぱりしたフルーツの酸味を一度に味わえる。容器ごとべイクドチーズケーキを焼成後、レアチーズケーキを重ね、さらにフルーツとゼリーを重ね、冷蔵して仕上げる。ベイクドチーズケーキは口当たりをよくするために粉類を使わない作り方でコクと甘さを訴求。レアチーズケーキは軽やかな口当たりにするため脂肪分高めの生クリームをホイップ状にして使用。フルーツのカットライン(断面部分)を容器の縁にピタリと張り付け、フルーツを大きく感じさせる視覚効果を演出している。
POINT:「縁ピタ」の視覚効果がユニーク
●店舗情報
明治屋(トライアル内・こはく本舗) 343店舗/福岡・全国(2025年2月末時点)惣菜売上比率8.2%(トライアル食品部門内)※酒類含む
明治屋/所在地=本社・福岡市東区多の津1-7-5/設立=2009年/店舗数=トライアル内343店舗、ほか外食10店舗