外食史に残したいロングセラー探訪(40)ストロベリーコーンズ「たっぷりコーンピザ」

2010.05.03 371号 08面
たっぷりコーンピザ

たっぷりコーンピザ

今年1月には海外第2号店となるアメリカ・ロサンゼルス店がオープン。生地に竹炭を練り込んだ黒いピザが「忍者」シリーズとして人気に

今年1月には海外第2号店となるアメリカ・ロサンゼルス店がオープン。生地に竹炭を練り込んだ黒いピザが「忍者」シリーズとして人気に

 宅配ピザ、ストロベリーコーンズの定番メニューともいえる「たっぷりコーンピザ」の具材は、クリームコーン(ペースト)、チーズ、そしてホールコーンだけ。そのシンプルさは人気の理由の一つであり、発売から約20年たった今でも、人気ピザ(単品)の上位5位内には必ず入る超ロングセラー商品である。

 「たっぷりコーンピザ」誕生のきっかけは、宮下雅光社長が喫茶店を経営していたころ、今から30年以上前にさかのぼる。北海道出身であり、もともとトウモロコシが好物であったという宮下氏は、トーストメニューのバリエーションとして、クリームコーンとチーズ、ホールコーンをのせた「コーントースト」の提供を始める。

 「これにたっぷりとタバスコをかけて食べるのが宮下流。コーヒーにもよく合う」(宮下氏)

 当時、お金のなかった宮下夫妻は、約3年の間ほぼ毎日、昼ご飯としてこのコーントーストを食べ続けていたという。

 その後、1986年に宅配ピザの「ストロベリーコーンズ」を開業。次々に新しいピザメニューを提案するうちに、次第にさまざまな要素をミックスしたメニューが多くなっていった。

 だが、何年かたつうちに、宮下氏は「もっとシンプルなものが食べたい」と原点回帰を模索するようになる。そのときに思い浮かんだのが、喫茶店時代に毎日食べ続けていたコーントーストであったという。早速、トーストをピザ生地に替えて試したところ、チーズとホールコーンにうっすらと焼き色が付き、「焼きトウモロコシ」のような香ばしさが楽しめる新メニューが誕生した。

 現在使っているクリームコーンは、ニュージーランドにある工場でのPB商品である。クリームコーンを「スープではなく、ピザに使う」ことがなかなか理解されず、希望通りの品質に至るまでには何度も足を運んだという。

 また、ホールコーンは米国産で、ゆでたあとに急速冷凍したもの。焼き上げたときに「焼きトウモロコシ」の味わいを目指すために、甘み、うまみのバランスのよいものを選んでいる。現在、Mサイズで約80gのホールコーンが使われている。

 チーズは糸の引き具合、焼き上がりの色、適度な乳脂肪分によるまろみ、程よい塩加減……といった独自のこだわりに適合した4種類のチーズをブレンドして使用。

 このピザの成功により、一般的なトマト味のピザソースではなく、具材に合わせたオリジナルソースを使ったメニューの開発が進み、現在では全体の約8割がオリジナルソースを用いたメニューであるという。「たっぷりコーンピザ」は、ストロベリーコーンズの独創的なメニュー開発の方向性を確立したメニューといえそうだ。

 ●店舗データ

 「ストロベリーコーンズ」/経営=(株)ストロベリーコーンズ/本社所在地=東京都港区海岸2-2-6/店舗数=「ストロベリーコーンズ」108店舗、「ナポリの窯」100店舗ほか(2010年3月現在)

 ◆たっぷりコーンピザ

 S890円、M1,470円、L2,520円 1日平均食数=約1,000食(全店舗合計)

 あっさりしていて食べやすく、無添加の「たっぷりコーンピザ」は、子どもに初めて食べさせるファーストピザとして選ばれることも多いという。

 ◆ストロベリーコーンズ発オリジナルメニュー

 「たっぷりコーンピザ」以外にも、ストロベリーコーンズが宅配ピザ初メニューとして発信したものがある。

 ○四角い「クリスピーピザ」(1996年5月~)

 丸形の厚みのあるパンピザは体積が大きい。ならば、クリスピーは、面積で…といった発想からスタート。カナッペのようなつまみ感覚でつまめるピザ、「大人のピザ」をイメージして開発された。

 ○1枚の生地で4つの味が楽しめる「フォーシーズンズ」(1997年4月~)

 1枚の生地の上で日本の四季折々を表現したい、そして、1枚で大人、子ども、女性、酒飲みでも楽しめるものをと誕生。季節ごとに人気上位の具材を使ってスタートした。

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