中華料理特集 メニュートレンド:ピリリとうまい!辛いおかゆ 「清粥小菜 明」
大阪・東三国は、企業と住宅が混在する下町。新大阪から地下鉄でひと駅という地の利から、単身赴任のビジネスマンも多く住んでいる。そんな東三国ではここ数年、小規模ながらこだわりのある専門料理店がちらほらと登場。グルメ雑誌に取り上げられるなど注目度が高まっている。本格中華の店「明」もその一つ。ホテルの中華で13年間修業を積んだオーナーシェフが腕をふるうオリジナル料理の中でも、辛いおかゆこと「名物潮州辣油と鶏と特製XO醤粥」が話題を呼んでいる。
◆「まろやか」「うま辛」「コク」の三重奏
「清粥小菜」とは、大皿に盛られたおかずの中から好きなものを選び、芋がゆと一緒に味わう台湾のおかゆ屋さんのこと。明はそんな清粥小菜に独自のアレンジを加えた店で、旬の“気”が宿った季節感あふれる創作中国料理を14種にもおよぶ紹興酒とともに楽しんだあと、胃にやさしいおかゆで締めるスタイルを提案している。
そのおかゆは、コメをだしの中でとろとろになるまで炊き上げるのが特徴の広東がゆ。明では、たっぷりの干し貝柱と鶏・豚の骨で丁寧に取った透明度の高いだしの中で、コメをしっかり泳がせながら約2時間かけて炊き上げており、一粒一粒のコメが「花が開いたよう」とたとえられる理想的な状態に仕上がっている。
トッピングや薬味に趣向をこらした5~6種類の広東がゆの中でも一番のお薦めは、おかゆの常識を破る「辛さ」が特徴の「名物潮州辣油と鶏と特製XO醤粥」。オーナーシェフの内田法明さんによると、香港から来日している点心師のもとで勉強しているとき、「忙しくてまかないを作る時間がなく、たまたま店で出していたおかゆに、点心師自慢の潮州ラー油と近くにあったXO醤をかけて食べた」のがはじまりだという。意外なおいしさに驚き、「いずれ店を持ったらお客さまにお出ししようとずっと頭の中にしまっておいた」そうだ。
実際の商品化にあたっては、潮州ラー油の個性に負けず、かといってけんかをしないXO醤作りに苦心した。試行錯誤の末、濃厚な味とコクはもちろん、食感にこだわった納得のXO醤が完成。戻した干し貝柱と、さらにそれを揚げたものの両方を加えている点が、コリコリ・カリカリの食感のポイントだ。
どこまでもなめらかでまろやかなおかゆそのもののおいしさと、潮州ラー油やXO醤との組み合わせによる味の変化を堪能できるこの一品を目当てに、遠方から足を運ぶお客が絶えない明。特に「酒を飲んだあとの締めにたまらない」との声が多い。
オープンから4年目を迎え、紹興酒とおかゆというスタイルが定着してきたことを実感している内田さん。これを機に、「ワインと中国料理のマリアージュ」という新しい提案にもチャレンジしていきたいと目を輝かせている。
●店舗情報
「清粥小菜 明」 所在地=大阪市淀川区東三国4-17-5 電話06・6396・2183/開業=2007年7月/営業時間=午前11時半~午後1時(LO)、5時半~10時(LO)※水および祝日は夜だけ営業、日休/坪数・席数=11坪・17席/1日来店客数=平均50人
●愛用資材・食材:潮州辣油&特製XO醤
明の「名物潮州辣油と鶏と特製XO醤粥」に使われている「潮州辣油」(右)と「XO醤」(左)はどちらも手づくり。潮州辣油は、炒めた唐辛子とニンニクをたっぷり漬け込む独特の製法による強い香りが特徴で、香港の点心師のもとで修業をしているときに見て覚えた作り方がベースとなっている。その個性的な香りと辛さに匹敵するコクと食感を追求することで生まれたのが、特製XO醤。一般的なものよりかなり濃厚な味付けと、干し貝柱によるコリコリ・カリカリの食感が、最後まで飽きさせないアクセントとなっている。