メニュートレンド:こだわれば缶詰もヒット食材 「ロックフィッシュ」

2011.01.03 382号 27面
缶詰を開き中の油を捨て、料理酒と醤油を少し加え、直火にかけてひと煮立ちさせたらサンショウの実をひとつまみのせ、粗びきコショウ少々振って提供する

缶詰を開き中の油を捨て、料理酒と醤油を少し加え、直火にかけてひと煮立ちさせたらサンショウの実をひとつまみのせ、粗びきコショウ少々振って提供する

カウンターでは立ち飲み。奥に9人ほど座れるテーブル席がある。希少な度数43度のサントリー角瓶を使った昔ながらのハイボールを出す店としても有名

カウンターでは立ち飲み。奥に9人ほど座れるテーブル席がある。希少な度数43度のサントリー角瓶を使った昔ながらのハイボールを出す店としても有名

 「缶つま」が人気だ。書店では開けてすぐ食べられる缶詰食材をアレンジするレシピ本が大ヒット。日本テレビとセブン&アイが共同して展開するウェブサイトでツイッターと連動した「缶つまバトル」をしたり、国分(株)がやはり「缶つま倶楽部」というウェブサイトを展開するなど、多方面でうなぎ上りのヒートぶりをみせている。ブームのキーマンが、銀座のバー「ロックフィッシュ」オーナーである間口一就さんだ。

 ◆絶妙なひと手間に店の個性キラリ シニア世代のノスタルジーを刺激

 一番人気の「オイルサーディン(竹中)」は同店の缶詰メニューを代表する一品。(竹中)とは京都丹後の老舗缶詰メーカー竹中缶詰(株)のこと。「日本一のオイルサーディン」とオーナー間口一就さんが絶賛する本品は、オープン当時から変わらぬスタイルで提供している。

 現在取り扱っている缶詰は10種類ほど。「最初はオイルサーディンだけでしたが、缶詰がごちそうだった当時を知っている世代のお客さまからのリクエストに応えていくうちに増えていった」と間口さん。今でも「地方を訪れたりすると、何か新しい缶詰がないかと探してしまう」という。オイルサーディンのほかには、コンビーフ(ノザキ)、大和煮(ノザキ)、しゃけ缶(ニッスイ)、アスパラ(ストー)などが人気でいずれも800円。最高値は「たらば・かに缶(トーヨー)」で、なんと3200円。

 缶詰に施される絶妙なひと手間が、常連たちの舌をとりこにする。間口さんは「料理酒や醤油といった調味料で味を調える程度」と言うが、たとえ缶詰であってもひと手間加えるかどうかで素材の味が引き出されるのだと実感させられる。コンビーフ(ノザキ)などはサンドイッチやスコッチエッグなどに変身するなど、メニューのバリエーションにも貢献する。

 厨房機器はなんと1口コンロとオーブントースターのみ。にもかかわらずメニューの数は常時40種類以上というから驚きだ。価格帯も半分以上が500円以下と銀座のバーとは思えないリーズナブルさ。缶詰や乾き物だけでなく、「冷やしたぬきチーズ」(400円)や「半熟いちごとブルーチーズトースト」(600円)など、ユニークなメニューが目白押し。キッチンパワーの弱さをまったく感じさせない創意工夫こそ、多くのお客に支持される理由だ。

 ●店舗情報

 「ロックフィッシュ」所在地=東京都中央区銀座7丁目2-14 第26ポールスタービル2F/開業=2002年3月/営業時間=午後3時~11時、無休/坪数・席数=9坪・9席+カウンター/1日来店客数=非公開/客単価=約2000円

 ●愛用食材・資材:フンドーキン醤油(株)(大分県臼杵市臼杵)「ゴールデン紫」

 「オイルサーディン(竹中)」の味付けに使用。同社は大分県で創業150年の老舗醤油メーカーで、醤油・味噌の生産は九州第1位を誇る。たまり醤油のようなとろみこそないが、九州の醤油らしい強い甘み。「私は愛媛の生まれですが、大分は海の向こう側ということもあって慣れ親しんだ味。料理の味付けにこの甘口の醤油を好んで使っています」と間口さん。ほんの少量入れるだけで独特のうまみとコクが加わる。缶詰食材をロックフィッシュの味に変える必須調味料だ。

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