フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(37)日本KFC HD 中国産鶏肉の風評被害は軽微

2014.11.03 428号 06面

 ●ファストフードチェーンの最古参企業

 「ケンタッキーフライドチキン」は、外食チェーン最大手の日本マクドナルドよりも1年早く、1970年3月の万国博覧会に実験店を出店して日本上陸を果たしました。同年7月には三菱商事と折半出資により合弁会社を立ち上げて本格的なチェーン展開を始め、今ではフランチャイズ店を合わせると1171店舗(2014年3月末時点)を展開する巨大チェーンに成長しました。

 ●中国産鶏肉問題の余波

 順風満帆に見えた日本KFCでしたが、今年7月、世界の消費者を驚かせた中国発の「食品消費期限切れ問題」という衝撃の事件が報道された余波で、一時的にダメージを受けることになりました。

 いかにもという感じではありますが、この工場で製造された鶏肉製品が主にアメリカに輸出されており、大口顧客としてマクドナルドやバーガーキングに加えて、ケンタッキーフライドチキンの名前が報道されたことから、日本KFCでも中国産の鶏肉が使用されているとのうわさがたちました。

 実際は、日本KFCでは一部商品で米国産を使用しているものの、大半の商品では国内産の鶏肉を使用していましたが(現在は全量が国産鶏肉を使用)、中国のKFCで使っていたとの報道から、この時期に一時的に客足が落ち込む事態となりました。今年8月の既存店売上高は1.4%減と、落ち込み幅自体は抑えられたものの、日本KFCでは10ヵ月ぶりのマイナスとなり、事件の影響は決して小さいものではありませんでした。

 ●マックとの違い

 いわば風評被害を受けた形ですが、不思議に感じるのはアメリカ本社のKFCが問題の中国産鶏肉を一部使用していたのに、日本KFCでは一切使っていなかったことです。これは、日本マクドナルドがアメリカ本社に合わせて中国産鶏肉をマックナゲットなどで使用していたことと対照的です。

 同じ米系の外食チェーンでありながら、片や日本KFCは日本独自の調達を行い大きなダメージを受けなかった一方で、日本マクドナルドが中国産鶏肉を使ったことを直接的な原因として、同じ8月の既存店売上げが25%の大幅な減収となったことは、まれに見る対照的な結果となりました。

 この違いは、日本KFCと日本マクドナルドの経営母体の差に見出すことができます。前述の通り、日本KFCはアメリカのケンタッキーフライドチキン(当時)と三菱商事との合弁会社(折半出資)としてスタートし、その後、株式公開を経て三菱商事が徐々に持ち株比率を上げていき、現在は約65%の出資比率、つまり日本KFCは三菱商事という日本を代表する大手企業の子会社なのです。

 一方、日本マクドナルドはアメリカ本社系列の資本が過半数を占めるという、名実ともに外資系企業として成り立っています。そのため、食材の調達についても米国本社が構築したグローバルサプライチェーンという世界的な物流網にがっちり組み込まれており、日本マクドナルドの裁量の余地は少ないといわれています。

 ご存じの通り、三菱商事は食品分野でも大手の一角を占めるメーンプレーヤーの1社であり、国内外とも調達力は群を抜いた存在です。日本KFCは、その三菱商事の子会社という非常に恵まれた経営環境にあることが、食の安全を犠牲にしたコスト優先主義に走らず、結果として今回のような中国産鶏肉問題という、本来は外国で起きている事件に事実上、巻き込まれずに済んだのではないでしょうか。

 筆者が若い頃に学んだ経営学のテキストには、「外資系=短期的利益を追求。日本企業=長期的利益を重視」とあったと記憶にありますが、今回の中国産鶏肉問題は図らずとも昔の経営学のテキスト通りの展開となりました。「食の安全」=「消費者の利益」=「会社の繁栄」という、まさに「三方良し」を現実の事件からあらためて学んだ気がします。

 ◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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