現役配達員 匿名座談会(3)Uber Eatsの裏事情を語る!!

2020.08.03 498号 10面
以前はあまり見かけなかった女性配達員が最近急増した、との声も

以前はあまり見かけなかった女性配達員が最近急増した、との声も

配達員の交通マナーの悪さには厳しい視線も注がれている

配達員の交通マナーの悪さには厳しい視線も注がれている

 ●長距離の配達案件はババ抜きのババ

 –配達員が感じる不満や、ウーバーイーツ(以下、UE)本部に望む改善点について聞かせてください。

 A氏 昨秋ごろから「距離料金」の報酬計算が改定され、私のようなバイク組は不利になりました。実例でいうと、以前は6kmぐらい先に配達した際は870円の報酬だったのが、同じ距離で730円ぐらいに落ちるようになった。バイクはどうしても長距離案件が多くなるが、それまでは距離料金が稼げたからまだ気持ちよく受けられた。いまやロングは、ババ抜きのババですよ。

 B氏 そもそも、店で商品をピックアップするまで、配達先の場所を教えてもらえないシステムも何とかしてほしい。ある程度の距離や方向だけでも、リクエストを受ける前段階で知りたい。「予定が控えているので、あと15分で終えたい」という時などは、配達リクエストを受けるべきか悩んでしまう。

 A氏 「今日は○回配達しないとクエストが達成できない」などという時も、配達先までの距離次第になってくる。それが分からないと、戦略の立てようがない。

 C氏 配達員は個人事業主になるため、私は確定申告が不安。その辺りの事情に詳しくないので、あまり稼ぎ過ぎると思わぬデメリットが生じそうで。UE配達員をメインのバイトにはできない、と感じています。

 B氏 配達員に知らされず、システムが変わることがよくあるので、改善してほしいですね。最近起きたトラブルでは、商品受け渡しはこれまで「玄関先まで届ける」か「外で受け取る」のどちらかだったのが、コロナの影響で、インターホンも鳴らさず玄関前に置く「置き配」の選択肢が知らないうちに増えていた。それもアプリの不具合なのか、お客さんが選ばないと自動的に「置き配」になってしまう(※取材当時の情報)。そのせいで「Bad」評価が付けられた配達員もいる。

 A氏 お客さんへの要望になるが、常識的な距離の範囲内で注文してほしい。これはUEアプリの不備でもあるが、例えば同じマクドナルドでも、お客さんの現在地から最も近い店舗を表示する機能がない。そのため、近所にマックがあるのに遠くの別のマックに注文してしまう、といったことが起きてしまう。われわれ配達員も人間なので、こうした無意味な配達はつらい。

 ●報酬が数値化されるゲーム感覚は中毒性あり

 –UE配達員で働いていて、どのような楽しさ、メリットを感じますか。

 B氏 自分の都合優先で、空き時間を利用できる点がやはり大きなメリットです。よい運動にもなる。スポーツ選手がトレーニングを兼ねて働いている、という話も耳にします。また、人間関係のトラブルがないので、わずらわしさがない。

 A氏 その週でどのぐらい頑張ったかが報酬に直結し、アプリで数値化されるため、達成感がありますね。雨の日以外は必ず稼働する、と私は決めているが、寒い日や暑い日、体調の悪い日でもそれを乗り越えて働くことが、モチベーションになっている。UEの収入を私はボーナス的にとらえていて、必ず稼がなくてはならない定収入、とは考えていません。だからこそ自発的に働け、ゲーム感覚で楽しめる。

 B氏 そう、お金を稼ぐだけの単なるアルバイトとは、少し違いますね。「今日はいくらゲットできるか」というゲーム要素に、不思議な中毒性がある。

 C氏 いつでも気軽に働け、待機時間は何をしていても自由というのがありがたい。注文してくれたお客さんの役に立っている、と実感できて、それが収入にもなる。こうした点は、他のアルバイトではなかなか見いだせないメリットですね。

 ●配達員の「マック地蔵」化 「数珠」ではるか遠方の地へ

 –UE配達員がよく使う用語、隠語を教えてください。

 C氏 マクドナルドは注文数が最も多く、店舗が各地にあるため、必然的に配達先も近くなります。マックの立地は周辺に他の人気UE加盟店が集まっている例が多いことからも、マック付近で待機する配達員は多い。これを「マック地蔵」と呼ぶ。

 A氏 待機場所から料理をピックアップする店までの距離が近いことを「ショートピック」、反対に遠い場合は「ロングピック」と言う。商品を受け取りに行くまでの距離は報酬に反映しないから、ロングピックはあまりうれしくない。

 B氏 同じ店から同時に2軒配達に行くのは「ダブル(ピック)」と呼んでいる。

 C氏 ダブルで配達先がそれぞれ真逆の方向になることもあり、これは「股裂き」といって、配達員はみんな嫌がります。

 B氏 配達先までの距離が近いのは「ショートドロップ」で、遠いのが「ロングドロップ」。ショートドロップは、感覚的に2km以内のイメージですね。

 A氏 私はクエストというインセンティブ目当てで配達回数を重視しているので、ショートドロップ狙い。でも私の場合、バイクで配達しているため、自転車では難しいロングドロップの案件がどうしても多く回ってくるのが悩ましい。

 C氏 「数珠」という言葉がある。これは配達に行った先で別の配達リクエストを次々と数珠つなぎのように受けてしまい、思わぬ遠方に行ってしまうこと。数珠で世田谷エリアから川崎や登戸まで行ったこともある。

 A氏 インセンティブ関連では、「シミ」というのもありますね。注文数が多い地域や、配達員が足りない地域は、インセンティブが発生する。その地域はUEアプリの地図上にシミのような濃淡の色を付けて表示されていて(=ヒートマップ)、色が濃いほどインセンティブも高額になる。

 B氏 私は日によって稼働エリアを変えていますが、シミ狙いで移動することも多い。配達員は個々に稼働していて横のつながりは薄いが、こうした隠語が広がっているのも、考えてみると不思議なものですね。

 –ありがとうございました。

 (おわり)

 ◆座談会出席者

 A氏 39歳男性 配達員歴約2年

 コンサートスタッフ、夜間の管理事務職、配達員のトリプルワーカー。UEの平均収入は1週間で6~7万円。

 B氏 25歳男性 配達員歴約2年半

 フリーランスのWebデザイナー。UEの平均収入は、5~6時間稼働して1日約1万円。

 C氏 18歳男性 配達員歴約2ヵ月

 大学1年生。UEの平均収入は、9時~20時に稼働して1日約1万円。

 ★編集部Eye 管理されないUEが日本の出前文化を超える可能性

 2016年に日本に上陸したUEは、フードデリバリーサービスの急拡大に大きく貢献した。同時に配達員の労働スタイルは、インターネットを通じて単発で仕事を請け負い、自分の働きたい時間だけ労働力を提供する「ギグワーカー」の概念を広く認知させた。UEのフレキシブルな働き方と自身で戦略を立てて稼働する報酬体系は、時間を自由に活用し、実力で成果を上げることにモチベーションを見出す働き手に支持されているが、一方で問題点も浮き彫りになってきた。

 配達回数を稼ぎたい一部の配達員による運転マナーの悪さは、UEが活発化したことで、いよいよ厳しい視線が向けられるようになった。また、UEの自由な労働スタイルは、「えたいの知れない人物が届ける」という利用者の漠然とした不安感と表裏一体で、抵抗を覚える人が少なからずいるのも実情だ。

 飲食店の料理を宅配するサービスとしては、日本にも古くから「店屋物の出前文化」が根付いている。しかし、日本の出前文化は牧歌的な“近所の出前”にとどまり、生活に不可欠なインフラに発展するまでには至らなかった。対してUEはシステマチックであり、かつての出前文化とは仕組みが根本的に異なる。

 今後、UEは「店屋物の出前文化」を超え、食生活を支える重要なインフラとして定着するか。それには「管理されない自由な労働形態」が内包するネガティブ要素をどう解消できるかが、一つの鍵となる。

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