企業トップinterview:日本KFCホールディングス・近藤正樹社長 ハレ消費から日常消費へ、転換に成功
7月4日に創業50周年を迎えた日本ケンタッキー・フライド・チキン。日本KFCホールディングスの前3月期は売上高796億3400万円(前年比7.1%増)、営業利益47億8500万円(同116.9%増)と増収増益。コロナ禍が外食産業を直撃した4月、5月も前年比33.1%増、同37.6%増と好調を維持した。近藤正樹社長に好調の理由、今後の外食産業などについて聞いた。
●好調なテイクアウト この流れは今後も続く
当社は2020年5月まで18ヵ月連続で既存店前年売上げをクリアできた。しかし、それ以前は売上げ・客数ともに微減傾向で推移していた。
改善するために「1年間で何回来店していただけているか」というデータ分析を行った。その結果、「1年に1、2回」という来店頻度が一番多いことが分かった。以前からお客さまの声は聞いていたが、来店頻度の少ないお客さまの声をしっかり聞きとれていなかった。
その意見は、KFCは「クリスマスのイメージ」「パーティーなど大人数のもの」「価格が高い」「少量では買いにくい」というものだった。リピート率を上げるためにQSC、ホスピタリティーの再教育を継続的に行った。メニューも日常的に食べていただくために、18年にワンコインランチを始めた。提供時間は午前10時~午後4時までで朝昼兼用にもなり、客層が広がった。
テレビCMも「今日、ケンタッキーにしない?」というコピーに切り替えた。それ以前は「やっぱりケンタッキー」で、これはファンの言葉だった。新コピーはインパクトがあり、「誰かが買ってきてくれる商品」から「自分で買う商品」へと日常化に成功した。
マーケティング施策も、お得感のある商品とワクワク感がある新商品を同時に提供した。店舗スタッフのオペレーションは大変だが、スタッフが協力して対応してくれた。結果、スキルが上がり、常に揚げたてが提供できるようになるなど、すべてが良い方向に回転した。連帯感の絆も生まれ、お客さまにも信頼いただけたおかげでコロナ禍でも問題なく営業できた。心から感謝している。
当社はもともとイートインの比率が低く、テイクアウト(ドライブスルー・デリバリー含む)の比率が高い。約1130店舗中、ドライブスルーは約400店舗、デリバリーは約300店舗で導入している。売上げが好調だったのはテイクアウト・ドライブスルー・デリバリー。この流れは今後も続く。
●コロナ終息後のビジネスモデルを
コロナ禍で好立地が好立地ではなくなった。当社も好調なのは郊外のドライブスルー。都心に近いほど回復が遅い。外食消費は、今後戻っても7割程度ではないか。その中で採算をいかに取るかを考えなければならない。テレワークが今後も続けば、オフィス街には人がいなくなる。皆、自宅の近くで飲食するようになれば、それに合わせた立地・業態が求められる。
お客さまのニーズの変化に合わせ、新たなビジネスモデルを考える必要がある。昼から営業の業態で一定のテイクアウト需要が見込める看板商品を作りあげることを考えなければならない。お客さまは、家庭では調理できないおいしいものを求めて来店される。このお店だから食べられる、このお店だから味わえる雰囲気…どこにもない独自性を研ぎ澄ませる時でもある。
今は厳しい状況ではあるが、感染症対策にしっかりと取り組み、安全・安心、お客さまの求めるQSCを改めて徹底的に磨きあげていく。コロナ終息後には、飲食店に必ずお客さまが戻ってくると確信している。