メニュートレンド:ドキドキ感ある創作かまぼこ
“かまぼこ”は、飲食店のメニューでは脇役的なイメージがある食材だが、かまぼこを主役に健闘しているのが大阪の「ハチマル蒲鉾 なんば千日前店」だ。さまざまな味が登場する専門店として若い女性客から話題が広がり、今や幅広い客層が訪れる人気店に成長。飲んでから寄る店ではなく、一軒目使いで楽しむ店として利用を伸ばしている。
●その場で練って出来たて提供 バラエティー豊かな全43種
「かまぼこの概念を変える!」が同店のモットー。店主の河内慎太郎さんは吉本興業の元芸人で、天満のかまぼこ専門店「八尾蒲鉾」との出合いが転機になった。「初めて感じたおいしさに『何だこれは!』と衝撃を受けました。その驚きを伝えられる店を開きたいと、芸人を辞めて弟子入りしました」。
約2年間、八尾蒲鉾で働きながらかまぼこ作りを修業。2018年に独立して「ハチマル蒲鉾 福島店」を、19年には2号店の「なんば千日前店」もオープンした。かまぼこのベースは、八尾蒲鉾と共同で自家製造するタラのすり身。オーダーを受けてからすり身を練って揚げ、出来たてを提供するスタイルだ。
メニューは、紅ショウガなどのベーシックなものから、カットして驚くドキドキ感ある創作かまぼこまで全43種類。その半分ほどは八尾蒲鉾の許しを得て取り入れた商品で、例えば、写真の「ウッフド・ロワイヤル」は八尾蒲鉾発祥の品。ほか2品は河内店主の考案だ。
一番人気は「のび~るモッツァレラ」。すり身の塩味とくせのないモッツァレラチーズがマッチし、イタリアン風にタバスコをかけても楽しめる。テイクアウトにも対応して好評なのが、巻き寿司スタイルの「ハチマルロール」。薄く揚げて作る“かまぼこシート”で酢飯を巻くという、斬新で満足感あるメニューである。
今までに数百種類を試作し、ほとんどの食材は経験済みという河内店主。「奇をてらうのではなく、“おいしくなくては意味がない”が信条」と、スタッフ全員で試食して納得できる味をメニュー化してきたとか。「かまぼこは、具材との相性だけではなく、分量やソースなど幅広く考える余地がある商品。これからも地道に取り組み、100年続く店を目指したい」と、河内店主は意欲を語る。
●店舗情報
「ハチマル蒲鉾 なんば千日前店」
所在地=大阪市中央区千日前2-3-33/開業=2019年11月/坪数・席数=約20坪・30席/営業時間=17時~翌1時、日曜=14時~22時。不定休/平均客単価=3500円
●愛用食材・資材
「仙介 純米大吟醸」 泉酒造(神戸市東灘区)
フルーティーで存在感あり
同店のかまぼこは、酒に合うようにと塩味を利かせているのが特徴。日本酒も約20種類を揃えている。銘柄の入れ替えも行っているが、開業以来不動の定番として人気なのが同品。魅力は、フルーティーで飲みやすく、日本酒としての存在感もある飲み心地。吟醸酒ならではの香りも楽しんでほしいと、ワイングラスで提供している。
規格=1800ml
【写真説明】
写真1:写真奥から「ハチマルロール」880円(税込み) テイクアウトもOK、「のび~るモッツァレラ」583円(税込み) 一番人気、「ウッフド・ロワイヤル」583円(税込み) カットすると黄身があふれる。鳥の巣をイメージした盛り付け