アポなし!新業態チェック(173)「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」大井町店
●鳥貴族がチキンバーガーで市場参入 国産食材100%でワンプライス、新たな基幹ブランドとして位置付け
鳥貴族ホールディングスが子会社を通じて8月にオープンしたチキンバーガー専門店「トリキバーガー」は、外食業界のみならず各方面で大きな話題を呼んだ。同店は、昨年5月に設立した子会社が出店した新業態。同社が得意とする鶏肉をはじめ、国産食材の安心感を武器に競争の激しいハンバーガー分野に進出した。鶏肉や野菜などの生鮮食材、バンズに使う小麦はすべて国産で、使用するソース類なども国内で最終加工されたものにこだわり、国産食材100%をうたっている。
出店は、JRなど鉄道3線が接続する大井町駅近くのビル1~2階。狭いエリアにいくつもの商業施設が立ち並び、周辺人口も乗り換え利用者も多い好立地だ。
メニューはワンプライス。バーガーはすべて単品390円、セットが590円で、「トリキバーガー」「焼鳥バーガー ~てりやき~」「つくねチーズバーガー」など8種類。パンがすべて白パンの朝食メニューは、単品290円、セット490円で、「たまごロール」「あんバターロール」「ベーコンエッグ」など6種類を揃える。白パンのバンズを使った2種類の「サラダチキン」というバーガーは、朝食メニューにもバーガーメニューにも採用されている。サイドメニューは「ポテト」(S/190円)、「クリスピーチキン」(390円)、「エッグタルト」「トリキプリン」「北海道ソフトクリーム」(各190円)など。ドリンク類もSサイズは190円というわかりやすい価格設定で、既存のバーガーチェーンに挑戦する。(価格はすべて税込み)
★けんじの評価:コロナ以前からの新業態プロジェクト
新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けている居酒屋業界だが、「鳥貴族」はコロナ禍以前から業績の低下で苦戦していた。同社は2017年に公表した18年~21年の中期経営計画で、関東、東海、関西の3エリアで1000店舗を達成するという目標を掲げ、急速に出店を進めた。しかし、店舗数の増加に売上げが追い付かず失速。19年には17年の同計画を取り下げ、新たに20年~24年の中期経営計画を発表して方針転換を図った。だが、20年には新型コロナの発生によりこの計画も見直しを余儀なくされ、新規事業として以前から計画していた新業態のプロジェクトを前倒しでスタートしたと伝えられている。
17年以降の同社の失速の要因は、同年に値上げを行ったことや、急速な店舗数の増加により自社競合を起こしたことが報じられている。しかし、そもそも(政策的なオペレーションによる株価の上昇は別として)日本の消費経済が長期間ほとんど成長しておらず、低価格を売りにする外食チェーンの主要顧客である大衆層の実質賃金の上昇も見られない状態で、鳥貴族だけではなく多くの外食チェーンが国内で拡大を続けることは難しいだろう。それを危惧する企業の多くが海外出店に活路を求めているが、それはさらに国内の消費経済を悪化させる。
日本国内の景気を回復させ、外食など流通サービス業の利用者である大衆層の購買力を上げて消費市場を拡大することが、最終的な解決と考えるべきだろう。
◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。
●店舗情報
「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」大井町店
開業=2021年8月23日/所在地=東京都品川区東大井5-16-9
編集協力:株式会社イートワークス
http://www.eatworks.com/