メニュートレンド:ハマグリのスター性! うどんとの組み合わせが美しい
ハマグリのビジュアルがこれほど強い一品も珍しい。「うどん 萬田次郎」の「濃厚貝汁つけ」は、半透明の美しいうどんと大きなハマグリの組み合わせが強烈な魅力を放っている人気メニューだ。濃厚なうまみと個性的なフォルムを持つハマグリは、メニューの主役となり得る華のある食材という事実がうかがえる。
●貝のうまみ最強
「うどん 萬田次郎」は、北九州市小倉南区「津田屋官兵衛」のうどんを受け継ぐ「豊前裏打会」の店舗の一つ。同会で独自ブレンドした粉を店で熟成し、「打ちたて」「切りたて」「ゆでたて」「半透明」が特徴のうどんを提供している。約1kg(4~5人前分量)に分けたうどん生地の玉を専用の温冷庫で熟成させ、「来店客の人数を常に見ながらうどんを切り分け、注文が入ったら切りたて、ゆでたてで出せるようにしている」と、関山裕次店長。出来上がったうどんはもちもちとした口当りに力強い弾力感があり、心地よくかみ切れるコシが絶妙で「他で食べるうどんとはまったく違う食感」と評判が高い。
中でも、「濃厚貝汁つけ」は必食の一品だろう。半透明の美しいうどんに大ハマグリが添えられ、そのビジュアルは完成された日本画のように芸術的だ。堂々たる存在感のハマグリは「通常の大ハマグリは130~150gぐらいだが、それよりさらに大きい160g以上限定で特別に仕入れている。原価率もかなり高くなり、正直厳しいが、この大きさにはこだわっている」(関山店長)。
このハマグリだが、ただの具材というだけではない。「濃厚貝汁つけ」のうどんつゆは、昆布、鯖節、鰹節、アゴ、煮干し、どんこ椎茸を合わせて毎朝仕込むだし100mlに、さらにシジミ100gとハマグリを加えて味作りをしている。シジミとハマグリをだしつゆで煮立てることで、ひんやりとしたうどんを引き立てる貝のうまみたっぷりのつゆが完成。ハマグリにもだしつゆの味が染み、一石二鳥というわけだ。味の面でもビジュアル的にも、料理の主役となり得るハマグリのスター性が同品から伝わってくる。
サイドメニューのおむすびも個性的だ。コメ1合につき煮切った純米吟醸酒70ml程度を加えて炊飯しており、日本酒がふわっと上品に香るおむすびは特別感がある。店内はうどん店には少し珍しいコの字カウンターの造り。「思い描いていたイメージに合致していたので、居抜きで入り以前の造りをそのまま使った」(同)そうで、古き良き大衆酒場のしつらいが逆に現代風の粋な雰囲気を醸し出している。
●店舗情報
「うどん 萬田次郎」
所在地=東京都新宿区新宿1-12-1 サンサーラ第三御苑1階/開業=2022年2月/席数=13席/営業時間=11時~15時30分、17時~21時30分。第1、3月曜休/平均客単価=1300~1400円
●愛用食材・資材
「純米吟醸 酒魂」玉乃光酒造(京都市伏見区)
コメに合う上品な香り
ほのかなコメのうまみと高酸度のキレ味が特徴的な純米吟醸酒。コメ本来のおいしさを追求し、京料理とマッチするバランスに仕上げた京都定番の味。「コメに合うお酒を探して行き着いた。上品な香りでご飯の風味を損なわずバランスよく仕上がる」と、関山店長は気に入っているという。
規格=720ml
【写真説明】
「純米吟醸 塩むすび」 200円(税込み)
純米吟醸酒を合わせて炊いた塩むすび。「普通の日本酒ではなく純米吟醸を使うと特別感があって面白い、と考えた」と、関山店長。一見すると日本昔話に出てくるかのような素朴な塩むすびだが、吟醸酒が香るツウ好みの仕上がり
「濃厚貝汁つけ」 1,500円(税込み)
昼5食、夜5食限定で販売。同店はQRコードで整理券を発券し、入店するシステムだが、開店直後の5人の来店客ですぐに完売する人気ぶり