寒天特集
伝統と先進性を併せ持つ寒天。豊富な食物繊維による健康機能の認知度拡大、物性開発の進展による新市場の開拓などで堅調な需要を維持してきたが、長引く新型コロナウイルスの感染拡大による業務用市場へのダメージが積み重なり、厳しい業況に置かれている。原料用途で大きなウエートを占めている菓子関連は、土産・贈答ニーズが停滞したまま。内食化で家庭用デザート製品などは伸びを見せているものの、業務用のマイナスを補うには及んでいない。角寒天、細寒天の伝統的な天然製造も、20~21年製造期は出だしこそ「何年かぶりの恵まれた天候」(長野県寒天水産加工業協同組合・五味徳雄組合長=当時)で順調なスタートを切ったものの、年明けの1月中旬以降は暖冬傾向で足踏み。結局、角寒天の製造量は前期を割り込む結果で終わった。
一方で、最大のネックだった原料海藻、原藻の価格高騰には一服感が。輸入原藻(紅藻類テングサ科)の2020年平均価格は5894円で、19年平均を677円、10.3%下回った。最大産出国・モロッコの輸出規制緩和、中国産テングサの台頭に危機感を募らせた韓国産の値崩れなど、背景にはさまざまな要因が絡んでいるが、21年1~5月期も5153円とさらに下がっており、苦境の業界にわずかな安堵感をもたらしている。約350年の歴史の中で培い、新たに切り開いてきた寒天の価値は、凍結乾燥状の硬さとゼリーのような柔軟さを併せ持つ。「目先の混乱に惑わされない、“遠きをはかる”姿勢」(伊那食品工業・塚越英弘社長)で、業界はアフター・コロナに向かう構えだ。(長野支局長=西澤貴寛)
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◆寒天特集:本質的変化に視点置いた開発を
水産乾物・塩蔵他 特集 2021.07.16伝統と先進性を併せ持つ寒天。豊富な食物繊維による健康機能の認知度拡大、物性開発の進展による新市場の開拓などで堅調な需要を維持してきたが、長引く新型コロナウイルスの感染拡大による業務用市場へのダメージが積み重なり、厳しい業況に置かれている。原料用途で大…続きを読む
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寒天特集:“遠きをはかる”価値の再構築
水産乾物・塩蔵他 特集 2021.07.16寒天は、カテゴリー市場の80%以上を占めるパウダー状の粉末寒天、家庭用需要が中心の角(棒)寒天、和菓子原料など業務用がメーンの細(糸)寒天に大きく分けられ、業務用向けにはフレーク寒天など多彩な形状タイプも展開されている。 寒天の世界シェアでトップを…続きを読む
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寒天特集:長野県寒天水産加工業協同組合・五味嘉江新会長に聞く
水産乾物・塩蔵他 特集 2021.07.16●底力具現化、消費者の期待に応える 「寒天、乾物には底力がある。それを信じ、具現化していくことで、一からから消費者の期待に応えていきたい」--。4月、長野県寒天水産加工業協同組合の組合長に就任した五味嘉江氏。角寒天製造などを手掛けるイチカネトの3代…続きを読む
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寒天特集:原料動向=20年原藻輸入量は17.2%減 暖冬や業務用低迷で
水産乾物・塩蔵他 特集 2021.07.16◆高騰一段落、漂う安堵感 財務省貿易統計によると、20年の寒天用原藻(紅藻類テングサ科)輸入量は1433tで、19年より17.2%減った。ここ数シーズンの暖冬続きで天然製造がはかどらず、製造各社が十分な原藻在庫を抱えていることや、コロナ禍による業務…続きを読む
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寒天特集:森田商店・森田庄次社長に聞く テングサも減産、価格ダウン
水産乾物・塩蔵他 特集 2021.07.16テングサ・寒天・海藻製造加工問屋を営む森田商店の森田庄次社長に現在のテングサの生産事情や今後の展開について話を聞いた。(西川昌彦) --昨年1年間を振り返ると。 森田 20年は、1年を通じて異常な年となった。全国の生産数量は入札数量と入札外数量で…続きを読む
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寒天特集:伊那食品工業 長期的視野で追求 安定供給などに取り組む
水産乾物・塩蔵他 特集 2021.07.16寒天のトップメーカー、伊那食品工業。コロナ禍に伴う業務用関連の需要低迷が業績に影を落としているものの、「目先の変化に一喜一憂するのではなく、長期的な視野で本来やるべきこと、寒天の可能性を追求した利便性の高い製品開発や安定供給に取り組んでいく」(塚越英…続きを読む