9月5日。今日はインドの教師の日
9月5日はインドにおける「教師の日」。第2代大統領で思想家でもあった故ラダクリシュナン氏の生誕日に由来する。
インドのカレーは辛くなかった?
カレーの故郷はインドといわれているが、厳密にいえばインドにカレーとよばれている料理は存在しない。インドにあるのは、多くの香辛料を使ったスパ イシーな料理であり、それらを西洋人、日本人が総称してカレーとよんでいるのである。したがってインドには、日本で一般的なカレー粉を見出すことはで きない(商魂たくましいインドの企業家が最近まさに「カレー粉」を作って販売している例は若干ある)。そこにあるのは、各家庭伝来の処方で作られた、ガラムマサラやカレーペーストなどである。ガラムマサラは、いくつかの辛い種類の香辛料を混合したもので、これを基本にして、材料や家族の体調などに合わせていくつかの香辛料を組み合わせ、独自の料理を用意している。
ここで面白いことは、古い時代のインドではカレーはそれほど辛くはなかったであろうということである。熱帯地方は暑さがきびしいので、発汗作用によ ってさわやかな感じを得るため、人々は強烈な辛味を好む。われわれがよく経験するように、暑さにより食欲が減退した時、香りの高い料理によって食欲を誘い、辛味の強い料理によって胃腸の働きを旺盛にすることは、 自然の摂理ともいえる。
とりわけ四季の別がない高温の国では、この辛味は重要な意味をもっているといえる。 しかし、かつてのカレーはそれほど辛くはなかったと考えられるのは、カレーの中に唐辛子が入っていなかったか、あるいは入っていても少量であったろうと推測されるからである。カレー粉の辛味は、後述するように唐辛子およびこしょうをその主体としている。こしょうはインドが原産地であり、なおかつ世界最大の産地であるが、唐辛子は南アメリカを原産地とし、 コロンブスの新大陸発見(1492年)まではまだインドに伝播していなかったと考えられるからである。それゆえこしょうを主体とした辛味であったと思われるが、その配合量もその強い芳香により限定されていたと想像される。
(日本食糧新聞社『食品産業事典 第九版』(引用箇所の著者:エスビー食品株式会社 ))