外食の潮流を読む(123)物語コーポレーションが新宿西口に250席の店を出店し強さ発揮

2025.09.01 559号 13面

 物語コーポレーション(本社/愛知県豊橋市、代表/加藤央之)が、その成長の勢いを増している。同社の2024年6月期の売上げは1071億5600万円だったが、25年6月期は前期比113.4%の1215億3400万円を計画している。同社が大きく成長拡大路線に舵を切ったのは、1995年12月に郊外ロードサイドに「焼肉一番カルビ」(閉店済み)を出店したことが、その始まりと見られる。その後FC展開を行うようになり、さらに「丸源ラーメン」「お好み焼き本舗」「寿司しゃぶしゃぶ ゆず庵」と業態を増やしていった。

 郊外ロードサイドで大箱店を展開し、いずれの店も大繁盛だが、これらの業態を都心にも出店。その端緒は「焼肉きんぐ」で、同浅草ROX店を22年5月に、「ゆず庵」は秋葉原店を24年11月にオープンした。

 この2つのブランドが6月末、新宿西口の大ガード近くの「新宿カレイドビル」6階に隣り合わせで出店した。この物件は以前スポーツジムが営業していて、「ゆず庵」96.35坪で124席、「焼肉きんぐ」は115.28坪で130席と、圧巻の広さである。ちなみに、「ゆず庵」「焼肉きんぐ」共に食べ放題で100分の時間制、オーダーはタッチパネルでテーブルバイキングである。

 郊外ロードサイド一本で展開していた当時、価格はメニューのグレードや品数で3タイプが設けられていた。それが、都心に出店するようになり、「都市型価格」を設けた。また「焼肉きんぐ」は都心に近い住宅地にも出店していて、「準都市型価格」を設定。それぞれのスタンダード(真ん中)の価格は、立地別に次のようになっている。

 ・ゆず庵:郊外ロードサイド3608円、都心型3828円(*すべて税込み、幼児無料、小学生半額、60歳以上500円引き)

 ・焼肉きんぐ:郊外ロードサイド3608円、準都市型3380円、都市型3939円(*すべて税込み、幼児無料、小学生半額、60歳以上500円引き)※すべて8月時点の情報

 「焼肉きんぐ」「ゆず庵」共に、時間制食べ放題のオペレーションの中に、ロボットを導入することで提供方法の効率化を図っている。「焼肉きんぐ」では、配膳ロボットを21年1月から順次導入し、また、特急レーンも同年3月から導入している。新宿西口大ガード店でも現在、特急レーンを採用している。

 このように接客を効率化することによって、両店共に「おせっかいマスター」という人材を店内に配置することが可能になった。それは、「おいしい状態で食事をしていただく」ための存在である。単純作業はロボットが行い、感情労働は人間が行うということだ。

 この2つの店とも目的来店型で高めの料金設定だが、客はそれを容認して来店している。主要客層は、20代・30代の若者であり、「幼児無料」ということからヤングファミリーが多い。2つの店で250席を超える「新宿西口大ガード店」は、これから「新宿の名物」となっていくだろう。

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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