海外通信 外食ビジネスの新発想(94)「クレープリー」「オイスター・バー」ハイブリッド業態
●「クレープリー」「オイスター・バー」新しい組み合わせのハイブリッド業態 地方食材×郷土料理×トレンド感の提案
パリにいながらブルターニュ地方の本格的な味を楽しみたい人におすすめの新スポットが登場した。17世紀の歴史的建造物が多く立ち並び、若者や観光客にも人気のマレ地区に新たにオープンしたクレープリー兼オイスターバー「Tycoz(ティコズ)」(ブルターニュ語で古い家)が注目を集めている。
数多くのクレープ店がひしめくパリの中で、同店が際立っているのは、ブルターニュ名物のガレット(そば粉のクレープ)と新鮮なカキの組み合わせというユニークなスタイルだ。オーナーはブルターニュ出身のアルバンヌとバティスト・ラモット姉弟。二人は「一日中いつ訪れても心地よく過ごせる場所」を理想に掲げ、ランチからディナーまで休みなく営業し、テイクアウトにも対応している。
看板メニューはそば粉のみで作る本格的なガレット。小麦粉を一切使わず、ノルマンディー地方の伝統的な製法で仕上げている。中でも人気なのが、ハム、チーズ、目玉焼きを包んだ「ガレット・コンプレット」(11.90ユーロ)。さらに、新鮮なカキ6個がついたセットメニュー(25ユーロ)も好評だ。オリジナルなメニューとしては、炒めたジャガイモと玉ネギ、クレームフレッシュのディップを添えた「スモークサーモンのガレット」(16.90ユーロ)も用意されている。
一方でオイスターバーとしての顔も見逃せない。カンカルやモルビアン湾から直送されるカキは一年を通じて提供される。繊細な食感とフレッシュな風味のカンカル産3番(3個で7ユーロ)、小ぶりでデリケートな味わいの「キスマリン」(3個で9ユーロ)、軟らかくふくよかな高級種「エトワール・キス」(3個で11ユーロ)などブルターニュの海を代表する銘柄が揃う。
ドリンクメニューはクレープと相性の良いブルターニュ産シードル(リンゴの発泡酒)を6種類取り揃えているほか、ビール、白ワイン、赤ワインなど通常のクレープ店では見かけないアルコール類も豊富。これはオイスターバーとしての一面を生かした構成だ。
デザートにも力を入れ、バターと砂糖のシンプルなクレープ(5.90ユーロ)から、グランマニエでフランベする「クレープ・シュゼット」(11ユーロ)まで10種類以上が揃い、カフェ利用から本格ディナーまで幅広く対応できる点も強みだ。
伝統的なメニュー構成に反して店内の雰囲気はモダンでシンプル。伝統と革新を融合したこの店では正統派のガレットだけでなく、他では味わえない進化系ガレットやカキとシードルのマリアージュも試せる。さまざまなシーンで訪れたくなる注目の店である。
(井澤歩)
●店舗情報
「Tycoz(ティコズ)」
4 Rue du Parc Royal 75003 PARIS











