中華料理特集:「グローバル・チャイニーズ」中華料理に新潮流生まれる

2004.07.05 287号 4面

◆塗り変わる勢力地図

中華料理は、料理そのものに目新しさがなくなり、時代に取り残されている。トータルのニーズは増えていないが、ラーメン店が好調なため、その分が上乗せ効果として全体を支えている格好だ。一般中華店、高級飯店はジリ貧の危機にあり、旧態然としたこれら専門店と、業態革新を行って元気の良いチェーン店と色分けがはっきりしてきた。業界全体の勢力地図が塗り変わっているといえるだろう。

これからはグローバル化の波を受けて中華料理は変わる。イタリアンやフレンチに比べ、中華料理はこれまでもっともメニューや業態開発が遅れてきた分野だ。戦後日本人向けにアレンジされた北京や四川料理は陳腐化している。

しかしいま、中国の高度成長を背景に、在日中国人の数が増え、ビジネスや観光で中国を訪れ、本場の味を知る日本人も増えてきた。民族が移動するとその国に一大食文化が築かれる。韓国料理が日本で新たな市民権を得て、ブレークしたように、中華料理も本場中国人の手により、新しい潮流が生まれるだろう。キーワードはずばり「グローバル・チャイニーズ」。沈静化していた業界にチャイニーズ旋風がやってくる。

注目されるのは、中国経済の中心地である上海、北京、広州、福建などの郷土料理をベースにしたネーティブな中国料理。女性に人気の観光地、香港のスイーツもねらい目だ。台湾は日本と行き来が多いわりには、まだ紹介されるメニューが少なく、小皿料理などにヒットの兆しがある。

また中国と東南アジア諸国とが融合した「タイ風中華」「ベトナム中華」といったアジアン・チャイニーズも、これから若者を中心にはやってくるだろう。とくにフォー、ビーフンなどのヌードル系が日本人の好みに合う。食材では、中国大陸の野菜やキノコといった珍しいものに注目が集まるだろう。

◆これからの一般中華店 ジリ貧から脱出する

消費者のニーズはいまだに高いものの、じわじわと客足が減っているのが一般中華店だ。

とくに日常食である中華料理のパイを奪っているのは、(1)バーミヤン、暖中といった中華に特化したファミリーレストラン(2)テークアウトにも対応したカジュアル・ファストフード(3)ラーメン専門店。

一般中華店の一番の弱点は、まず旧態然とした品ぞろえだろう。メニューブックに品ぞろえは多くても、実際に客が注文するのは「麻婆豆腐」「エビチリ炒め」など限られたもの。昔はごちそうだったこれらのメニューが日常食化してきたことで、ファミレスとの差別化がなくなっている。

とくに麺類は、ラーメン専門店が一大カテゴリーを形成し、麺を注文する客が食われている。担々麺などのような中華料理店の人気メニューも、メーカーの商品開発によって手軽に提供できるようになり中華店の専門性は奪われつつある。

またチェーンの価格競争にも、一般中華店は対抗できない。6月に中華宅配専門チェーンのチャイナクイックが、五〇〇円単価の中華店をオープンし、話題を呼んだ。テーブルサービスのファスト・カジュアル店で、テークアウトにも対応する。ポピュラー商品の提供の仕方を変えることで新しい業態を開発した。

こうした情勢の中で、ただ商品を並べているだけの中華料理店はジリ貧を避けられない。今後は、「この店でしか食べられない」という職人技によるオンリーワン商品を開発すること。看板メニューを掲げられる専門店に変身してこそ、生き残りの道がある。

たとえば「水餃子」。中国では主流だが、日本ではマイナーな存在で、まだ本場の味が伝えられていない。これから中国との交流が拡大するにつれ、本場の水餃子を食べたいというニーズは確実に出てくるだろう。

◆産業給食 目先を変えて女性客を吸引

産業給食の中華料理は、スピード調理できる丼物や麺類に偏りがちだ。だが、日常外食である給食に求められているのはヘルシーさ。女性はもちろん、働き盛りの中高年にとっても「健康」はいま重要なテーマである。

給食における中華料理の課題は、野菜を上手に多用すること。とくにたくさんの野菜が食べられる「野菜炒め」の潜在的ニーズは大きく、必ずヒットする。

「注文が入ってから短時間で調理」もしくは「大量に作り置き」という給食のオペレーションでは、なかなかメニュー化しづらいが、あらかじめ野菜や調味料をそろえておけば、調理にそれほど手間どることはない。「給食は安価で」というイメージがあるが、コストアップになる分、多少価格を上げても、「野菜炒め」ならニーズはある。発想の転換で売れるメニューづくりにチャレンジすることを勧めたい。

また、給食の利用が少ないOLにも中華料理は喜ばれる。昨今の女性は昼食にボリュームのあるものを好む傾向がある。点心の小皿をつけたセットや、ハーフポーションの麺と小サイズのご飯のセットなどがあれば、喫食率もアップするだろう。

その場合、麺の具材に変化をつけたり、ただの白飯でなく、具材かけご飯やチャーハンにするといった目先をかえる工夫も女性を引きつけるポイントになる。

◆CVS 女性に本場のデザートを

日常食として利用されるコンビニエンス・ストア(CVS)の惣菜は、消費者の志向も保守的な傾向がある。とくに中華料理では、「中華丼」「冷やし中華」「焼きそば」「餃子」といったポピュラー商品が売れ筋で、変わったメニューを置いても売れない。そのため差別化も一段と厳しい。

流行を追うのではなく、ポピュラー商品をいかによりおいしく向上させるか、地道に努力することに尽きる。たとえば昨今インスタントラーメンが高級化して売れているように、キーワードのひとつは「本格志向」。麻婆豆腐に花サンショウを使い本格四川風にする、酢豚の酢を黒酢に変える、といった調味料の変化で対応できる。辛み志向が強い若者に合わせて、エスニックや四川などのパンチを効かせた辛い味付けで、遊び感覚のメニューを出しても受けるだろう。

また、包材もおいしさアップのために見直してみたい。ご飯と具材は別々にパックした方が「五目あんかけご飯」などはおいしくなる。今人気のフカヒレスープかけチャーハンもメニュー化できれば売れる。

また、CVSの弱点は、女性客を取りきれていないこと。女性を呼び込むためには、デザートの品ぞろえの充実が欠かせない。いまはアジアへの観光ブームで、女性は本場のデザートを食べている。中華デザートの開発が集客力アップにつながるのは間違いない。

若い男性には、牛肉のアキレス腱や豚の角煮などボリュームある具材を乗せた中華風ご飯や、「保仔飯」(土鍋の炊き込みご飯)がこれからはやるだろう。

◆居酒屋 人気のデザートアジアン・スイーツも必須アイテム

中華料理は酒のつまみになりにくいメニューが多い。そのため中華専門店でも本格的に酒を飲む習慣がこれまでなかった。

しかし、いまの居酒屋は和風ブームに傾き過ぎており、どこも同じようなメニューになっている。昨今の居酒屋では、「食」の楽しみも提供できなければならない。中華料理は手つかずの市場として大いに注目できるだろう。

酒に合うのは台湾料理。とくに本場の屋台で提供しているような小皿料理が面白い。小籠包など点心類は冷凍品を上手に使えば、オペレーションが簡単な上、低い原価で高級イメージを訴求できる。また中国鍋の火鍋などは、夏の暑いシーズンでもビールに合う。

土鍋を使って、「大陸のピリ辛火鍋」といったネーミングで食べさせる工夫をすれば、さらに注目度は高まる。〆の一品では、フォーやスープ春雨、焼きビーフンなどのアジアン・ヌードルが若者の人気を集めるだろう。

また、女性を取り込むためには、デザートも居酒屋にとって必須アイテム。とくに人気のアジアン・スイーツは狙い目だ。杏仁豆腐やマンゴープリンはすでにおなじみになったが、香港のカメゼリーなど、まだまだ発掘されていないデザートは多い。

最近は豆腐をメーンにした居酒屋が増えている。香港スイーツ・レストランとして女性の人気が高い「糖朝」のヒットメニュー、「豆腐花」(温かい豆腐デザート)などは簡単に応用できるだろう。

◆高級飯店 看板料理を明確に

高級飯店のメーン顧客は接待需要。それが昨今、官民での接待が激減したこと、また個人のぜいたく消費も落ち込んでいることなどから、高級飯店は厳しい岐路に立たされている。

今後は個人をターゲットに、いかに需要を喚起するかが生き残りのカギとなるだろう。ひとつは円卓による大皿サービス、コース料理の見直しだ。個人消費が落ち込んでいるといっても、「いいものを日常的に食べたい」というニーズはある。またお金があっても、もっと使い勝手の良い中華料理を食べたいと思っている。

一時期は創作中華のようなヌーベル・シノワもはやったが、本格的な中華料理には依然として根強い人気がある。ボリュームを抑え、少人数に対応する量や、客がもっと自由に選択できるコースなど、提供の仕方やサービスを根本的に変えることが求められている。

また、今は店の看板やシェフの知名度だけでは、客を呼べない。ほかにはない看板料理を持つことで、明確に「あの料理を食べたい」と思わせる動機付けも必要だ。

さらに高級店といえども女性の潜在需要は大きい。それを引き出すためには、ランチタイムにヘルシーな薬膳風料理や一口サイズの少量多品目セットを提供するといった工夫が必要だろう。また高級飯店にとってアイドルタイムの長さも課題。中国茶ブームに合わせ、中華系のデザートバイキングを出せば、店のネームバリュームも手伝って必ず行列ができる。

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