売れるメニューのヒント:弁当編 埼玉(2)
○ボリューム感出す丸い容器
◆豚肉饅頭(228g/120円)
●マルエツ東門前店(さいたま市見沼区大字東門前字谷中77-1)
直径12~13cmの豚まんじゅう。
写真なので大きさが分かりづらいが、かなりジャンボサイズの豚まんじゅうである。丸い容器にゆったりと入っているので余計に大きく見える。このボリューム感で120円なのだから、売れるのは当然だ。だがこの豚まんじゅうには優れたポイントがもう一つある。このままレンジアップできるのだ。手を汚さずやけどの心配をしないで加熱できるメリットは計り知れない。ぜひまねしてほしい。
○大味に見えても心配り繊細
◆ロースカツ弁当(500g/480円)
●マミーマート堀の内店(さいたま市堀の内1-606)
大きなロースカツ、スパゲティ、しば漬け、レタス、ミニトマト、パセリ、白飯。
大きな豚カツが7切れも入ったダイナミック弁当だが、豪快なだけではなく、細かい気配りが至るところに表れている。まず、2個付きのソース。これだけカツにボリュームがあると、ソースは1個では足りない人も多い。そして、スパゲティにかかった粉チーズ。付け合わせにもかかわらず手抜きをしない努力が泣かせる。大味に見えて実はとても繊細なのだ。
○カップの色で秋の深さ表現
◆松茸ごはん弁当(398g/550円)
●彩月(埼玉県川越市脇田町105 マルヒロアトレ内)
松茸ご飯、煮物、サバの味噌焼き、卵焼き、かまぼこ、マカロニサラダ、ブロッコリー、カリフラワー、ニンジン、レタス、桜漬け。
9月下旬の弁当。まだ緑色が残り、紅葉にもう少しといった初秋の雰囲気が見事に再現されている。秋の弁当はどこもかしこも紅葉のバランを使うため、差別化がしにくい。この弁当のように初秋は緑のフードカップを使い、中秋は黄色のフードカップに替え、晩秋には赤色のフードカップを使うといったメンテナンスをすれば、必ず常連客は細かい心配りに気づき、感動の秋弁当になるだろう。
○リアルとバーチャルの紅葉
◆松茸ごはん弁当(442g/680円)
●東武ストア川越店(埼玉県川越市脇田町105)
松茸ご飯、大学芋、煮物、マイタケ天ぷら、サケ塩焼き、だし巻き卵、桜漬け、パセリ。
秋の食材が入った弁当に紅葉のバランは、別に珍しくない。また、紅葉の型抜きをしたニンジンを入れるのも、それほど珍しくない。だがこの弁当はバランの紅葉とニンジンの紅葉をともに入れ、リアルとバーチャルを見事に融合させている。見るだけよりも、食べるだけよりも、見ながら食べる方が、秋を満喫できることは明らかなのである。
○主役にも負けてないゆで卵
◆カキフライ弁当(334g/500円)
●彩月(埼玉県川越市新富町2-6-1 丸広百貨店内)
カキフライ、ゆで卵、キャベツ、レタス、ポテト、桜漬け、タルタルソース、白飯。
本来ならカキフライをもう1個入れなければならないスペースに、1/2カットのゆで卵を入れてすき間を埋めている。ところが代役のゆで卵は、大きさ・色彩ともにカキフライに負けない存在感で、弁当全体のイメージを明るくしている。しかも低コストのゆで卵を入れたおかげで、売価をワンコインちょうどに抑えられたことも素晴らしい。代役の大活躍で、見た目も差益もアップした弁当だ。
○豪快で小技効いた盛り付け
◆サクサクとんかつ弁当(460g/598円)
●ヤオコー大宮蓮沼店(さいたま市見沼区大字蓮沼508)
ビッグサイズの豚カツ、レタス、キャベツ、ポテトサラダ、レモン、パセリ、赤カブ漬け、白飯。
ボリュームたっぷりの分厚い豚カツが、弁当箱の中央を縦断。横より斜めの方が距離が長いのだから、普通の豚カツ弁当に比べてカツの量が多いことを理論的にアピールしやすい。しかも両側が白飯と白いポテトサラダにはさまれているので、視覚的にもアピールしやすい。ところが実際には両端が微妙に狭まっており、カツのボリュームがそれなりにセーブできている。豪快に見えて小技も効く。
○心まで丸くなる心憎い演出
◆豚ヒレカツ弁当(467g/458円)
●フードガーデン七里店(さいたま市見沼区東門前92-1)
丸いヒレカツ、だし巻き卵、ミニトマト、しば漬け、小梅、パセリ、レモン、白飯。
一見、何の変哲もないただの豚カツ弁当だが、よく見るとすごい発見がある。3枚の豚ヒレカツがハムカツのように丸いのだ。それだけではない。だし巻き卵、ミニトマト、レモン、しば漬け、小梅など、入っている素材すべてが丸いのだ。作り手の意図に気づかないまま食べ終わってしまう人が多いかもしれないが、気づいた人はきっと心が円くなることだろう。
○カツの衣とパンの耳一体化
◆やわらかロースカツサンド(278g/398円)
●ヤオコー大宮蓮沼店(さいたま市見沼区大字蓮沼508)
縦切り食パンの分厚いロースカツサンド。
ほとんどのカツサンドは、パンに比べて中身のカツが小さい。そのためカツとパンを一緒に食べているうちはおいしいが、最後は寂しくパンだけを食べることになる。だがこのカツサンドは、パンとカツを全く同じ大きさにしたことによって、カツの裁断面と食パンの裁断面、カツの衣とパンの耳が見事に一体化している。この完璧な一体化が、従来のカツサンドとは一味違う、最後までおいしく食べられるカツサンドを実現している。
○主役は素朴、脇役は華やかに
◆焼そば&味噌ヒレカツ丼(436g/398円)
●本川越ペペ(埼玉県川越市新富町1-22)
味噌ヒレカツ、焼きそば、レタス、キャベツ、桜漬け、白飯。
メーンの「焼そば」と「味噌ヒレカツ」は味・ボリュームともに申し分ないが、見た目はどちらも暗い。その欠点を見事にカバーしているのがレタスと桜漬けだ。ほとんどが枯葉色の中、わずかに見える程度の緑色とピンク色が弁当全体を美しく輝かせている。見栄えだけよりは中身だけで勝負している弁当の方が良いが、最も良いのは中身が充実していてワンポイントの色気を持っている弁当なのだ。
○人気あるサケとイクラのせ
◆鮭とイクラの和風パスタサラダ(148g/240円)
●マルエツ東門前店(さいたま市見沼区大字東門前字谷中77-1)
ほぐしサケ、イクラ、シメジ、キュウリ、和風スパゲティ。
サケ&イクラといえば丼物では人気定番だが、パスタでは意外に少ない。パスタと一緒に炒めるとイクラが白濁する恐れがあるからだ。この「鮭とイクラの和風パスタサラダ」は、シメジと一緒に醤油味で炒めたパスタを冷ました上に、サケとイクラとキュウリをトッピングし、視覚的にも味覚的にも完成度を高めている。そば・うどんでもぜひ試してみたいトッピングだ。
○人情にほだされついホロリ
◆煮物盛合せ(266g/312円)
●東武ストア川越店(埼玉県川越市脇田町105)
大根、コンニャク、里芋、タケノコ、ニンジン、がんもどき、結び昆布、卵、椎茸。
写真で見る限り、何の変哲もない煮物9種類の盛り合わせである。この煮物盛り合わせのすごさは、内容でも盛り付けでも商品名でもない。「似たものどうし」というキャッチコピーだ。日本人は浪花節に弱い。数ある煮物の中でどれにしようか迷っている時に、「似たものどうし」というキャッチコピーを読むと、つい人情にほだされてホロリと買ってしまうものなのだ。
○扇の形に盛り付けた芸術品
◆鶏のてりやき丼(390g/580円)
●イカリ(さいたま市大宮区錦町630 JR大宮駅構内エキュート大宮店内)
鶏照り焼き、キヌサヤ、サンショウ、白飯。
鶏肉の照り焼きが容器の形に合わせて扇のように並べられ、サンショウが扇の要のようにうまくご飯を隠しながら置かれている。脇にはキヌサヤもミニチュア扇のように添えられ、まるで芸術品のように美しい。この丼を見た人は、よほどのことがない限り購入を決意してしまうほどインパクトのある盛り付け方だ。豚カツやエビフライなどで応用したら、すごい丼ができそうだ。
(調査執筆・平成17年7月10日~11月1日)