アポなし!新業態チェック(24)「おぼんdeごはん」新宿ミロード店
個室居酒屋ブームの先駆けとなった大型店「手作り料理とお酒 えん」のほか、「和食えん」「和食屋の惣菜えん」「だし茶漬けえん」など、系列を含めて約40店舗を展開する(株)ビー・ワイ・オー(BYO)が、去る7月9日、カフェスタイルの和定食店という新業態を新宿駅の駅ビル「新宿ミロード」に出店した。
「おぼんdeごはん」と名付けられたこの新業態は、「定食&カフェ」というサブタイトルが付けられており、インターネットのグルメサイトには「元気になる」「健康食」「きれい」「栄養バランス」といった、今どきの女性が心引かれるキーワードが並んでいる。
「新宿ミロード」は、小田急電鉄の傘下にある比較的小規模な駅ビルだが、JRをはじめ駅ビルや百貨店がひしめく新宿駅周辺にあって、あえて女性が好むパスタなど麺類の業態を集中して誘致するなど、独自のテナントミックスで女性客に人気の飲食ゾーンを持つ。同店はその飲食ゾーン3フロアの最上階に位置しており、明確に女性客をターゲットとして意識した業態だ。
同店のメニューは、“和食を「カフェ」スタイルで提供する”という分かりやすいコンセプトであり、主力は、肉や魚のメーン料理のほかに、「ご飯・味噌汁・サラダ・豆腐・副菜2種類・ごま塩・漬物」などが付いた「おぼんde定食」(1050円~)。メーン料理は20種類以上、ライスも「白ご飯・五穀ご飯・五穀ひじきご飯」の中から選ぶことができる。ほかにオリジナルのデザートやドリンクメニューもあり、買い物客だけではなく周辺で働く販売員など、多くの女性客でにぎわっている。
★けんじの評価
居酒屋といえば「安さ」を競う大衆居酒屋しかなかった飲酒業態チェーンの世界に、100坪超の大型店を中心として、水の流れる坪庭や縁側など日本家屋の風情あるしつらえを持ち込み、その後の「個室居酒屋」スタイル大ブームを切り開いたのがBYOの「えん」である。
現在は時代の流れに即してランチ営業も行っているが、当初はあえてディナータイムだけの営業を行い、決して高くはないが従来の大衆居酒屋よりもワンランク上の価格帯で勝負を仕掛けるなど、それまでの業界の常識を覆して、まったく新しいマーケットを切り開いたという功績は、後世まで語り継がれるべき外食業界のエポックと言っても過言ではない。
何よりも、お客が飲食店に求める価値の多様性という視点を明確にしたという意味で、多くの業界関係者は目からうろこが落ちる思いだったのではないだろうか。
今回、そのBYOが出店した「おぼんdeごはん」は、もはやひとつのフォーマットとして確立された感のある「カフェ」スタイルのエッセンスを的確に取り入れた「ハズレのない」新業態だといえる。
実は、同店は3月に出店した「ガレット」を売る新業態のリニューアルだ。店舗の基本的なレイアウトは同じだし、商品としてのガレットは現在の同店にも引き継がれているが、内装はよりナチュラルな明るいデザインに変更され、業態は多くの女性のハートに訴えかける要素のかたまりになった。
「この程度の“売れる業態”なら、簡単に作れるんだよ」という、同社の自負を感じさせるような店舗であるといえるだろう。
(外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)
●店舗概要/店名=「おぼんdeごはん」新宿ミロード店/開業=2008年7月9日/所在地=東京都新宿区西新宿1-1-3 小田急新宿ミロード9F/席数=75席
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。