業務用加工食品ヒット賞 給食・惣菜部門:ヤヨイサンフーズ「とけないアイス風デザート」
◆物性を改善、形状を保持
ヤヨイサンフーズの「とけないアイス風デザート」は、高齢者や幼児など「食事に時間がかかる人たちにもアイスクリームの味を楽しんでほしい」という思いから生まれた。咀嚼(そしゃく)困難者向けやわらか食「ソフリ」シリーズのデザート新商品として昨秋登場。ネット検索数の急上昇を機に、今春には数々のメディアに取り上げられて話題となった。5月以降の売上げは急上昇し、7月末までの累計販売食数が100万食を突破するヒットを記録。最需要期の夏場に向けて順調に売上げを伸ばしている。
“食べたくても食べられなかったものを提供したい”が「ソフリ」全体に共通する開発テーマ。04年のシリーズ発売から今年で11年目、東日本大震災で基幹の気仙沼工場を失う大打撃を被ったが、13年度売上げは前期比39%増と大幅に伸長。震災前のピーク売上げを更新して早期復活を遂げている。「とけないアイス風デザート」のヒットが今後の「ソフリ」拡売を強力に後押しすることは間違いない。
開発は昨年1月、関東学院大学健康栄養学科・松崎政三教授の研究協力の下で始まった。同教授ゼミ研究テーマの一つが「溶けないアイス」だった。その基礎研究をベースとして、ヤヨイの開発陣が蓄積した得意のムース技術を活用して商品化し、ライン生産に落とし込んだ。病院・福祉施設を主要販路とする「ソフリ」のマーケティングで培った現場の栄養士との密接なネットワークこそ、松崎教授との協力関係を可能にしてヒット商品の誕生につなげた原動力だ。
商品化のカギはムース状とすることで溶けやすいアイスの物性を改善し、形状を保持する機能をもたせたこと。苦慮したのはアイスの風味を忠実に再現し、かつ温度が上昇しても食感と味を両立させることだった。特にアイスは溶けると甘味が強調されすぎるが、「とけないアイス風デザート」は甘味料の配合を工夫し、すっきりした切れのある甘味をもたせた。冷凍状態から室温20度Cで30分たっても形状をとどめ、冷蔵状態で2時間置いても同様に形を保持できる。
昨秋に「バニラ風味」を発売後、「いちご」「チョコ」「抹茶」「あずき」を矢継ぎ早に投入して計5品の品揃えとした。バラエティー化によって毎日の普段使いに対応し、学校給食や保育園などの大量給食向けにも広く需要を見込む。
◆規格=350g(10個入り)×4×3合(冷凍)
●SFとけないアイス風デザート35(バニラ風味)
特徴/室温でも液状になりにくく、なめらかな食感を維持する新しいデザート。そのままでももちろん、他の食材とも組み合わせやすい、オーソドックスなバニラ風味。
●SFとけないアイス風デザート35(チョコ)
特徴/クーベルチュールチョコレートを使用した、なめらかな食感とカカオの風味。
●SFとけないアイス風デザート35(いちご)
特徴/イチゴの果肉と果汁が加わった、さわやかな酸味とまろやかな甘味。
●SFとけないアイス風デザート35(抹茶)
特徴/和風シリーズが仲間入り。香り高い静岡県の抹茶を使用。
●SFとけないアイス風デザート35(あずき)
特徴/北海道産小豆を使った風味豊かなあんを使用。小豆の風味を生かした上品な甘さ。