3CVSの弁当・惣菜マーチャンダイジング
別表(前ページ掲載)は、㈲デリカ・コーディネートが三年前から三大CVS(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)を対象に、弁当、おにぎり、麺について調査、分析し「CVS中食分析情報」として提供しているものだが、この中から弁当の「価格帯分析」を抽出し、三大コンビニエンスのマーチャンダイジングをとらえてみた。
表は平成10年11月1日~平成11年10月30日までの一年間に、各社が販売した商品を、分類ごとに三〇円刻みのマトリックスにまとめたものである。
三社の総商品数に注目したい。三社にかなりの商品数の差があることがわかる。セブンイレブンが最も少なく、ファミリーマートとの差は倍近くにもなる。
三社共通して商品導入の多いカテゴリーは「洋風・中華弁当」である。コンビニエンスユーザーの六〇~六五%が男性であり、その大半が若者であるため、「洋風・中華弁当」が好まれるからだが、「丼」「上乗せ弁当」も若者に支持されているカテゴリーである。
「洋風・中華弁当」に分類されるアイテムで、三社が共通し常に販売しているのは、「ロースとんかつ弁当」と「カレー」である。これ以外に、セブンイレブンではオムライスや炒飯など炒めご飯類や、ロース生姜焼き、ハンバーグなどの売れ筋をメーンとしたアイテムを織り交ぜて導入している。
他社では、唐揚げ弁当、ロースカツ&チキンカツ弁当のように二種類の主菜をセットにしたタイプや、中華系弁当などが目に付く。
セブンイレブンが直近の平成11年11月23日に販売した「欧風ビーフカレー」は、白飯が二四六g、カレーが一八八gに福神漬けが一一gの商品内容となっている。容器のサイズは二六〇×一八八×四五㎜でかなり大型の商品に仕上げてある。見た目で満腹感を与え、五三〇円でリーズナブルさにつなげようとするコンセプトである。
一方で、ローソンは「シェフのミニビーフカレー」を平成11年10月26日に販売した。ネーミングの通り白飯が一二三g、カレーが一四六gに福神漬けが三gの商品内容であり、容器のサイズは一三五×一八〇×四八㎜と小パックのつくりとなっているが、この商品は女性をターゲットとしたアイテムである。
女性は併せ買いをする。従ってこの商品以外にサラダやヨーグルトを一緒に買うパターンが多いために、ミニのアイテムが用意されているのである。
このようにターゲットの違いにより、その商品性は異なっているのである。
コンビニでは新商品が発売され、その商品が発売中止となることを、「商品の改廃」と呼んでいる。先の定番メニューであるカレーをローソンでは、この一年間に六回改廃を行い、ファミリーマートでは五回、セブンイレブンでは四回行っている。
その都度商品の内容を変えている。当然、容器、ネーミング、価格まですべて変更される。カレーのように、極めてシンプルな商品であっても、このように頻繁に商品を入れ替えているのである。
改廃の目的は、ユーザーに新鮮さを与え、店舗の販売意欲を高めるためである。たしかに、ユーザーの新商品に対する反応は高く、売上げが向上するとともに店舗の活性化につながっている。
しかし、お好みの商品があっても終売となって店舗になくなることも考えられ、コンビニユーザーにとっては、改廃が多くなることにより期待を裏切られるはずである。
一方、販売中止により、食品原料メーカー、包材メーカー、問屋に在庫のしわ寄せが起き、コンビニとの取り組みに疑問を持ち、撤退するメーカーもあるようである。
すしも外食産業との購買層の相違がはっきり出ている。江戸前ずしのように高価格で、高い割にボリュームに物足りなさを感じるような商品は、コンビニエンスでは比較的に人気が薄いのである。
外食産業に対するニーズの差はまさにこの点にあるのだが、すしが低価格帯に集中しているのは、いなりや海苔巻きと、これらの詰め合わせが多いためである。
コンビニのFFを陳列する棚は、弁当では二つ、惣菜で一つのショーケースによって販売されているのが一般的である。セブンイレブンのFFは親会社であるイトーヨーカ堂より、このわずかなスペースで売上げが多いのである。両者を単純に比較できないが、イトーヨーカ堂よりはるかに効率よく販売していることは事実である。
セブンイレブンが、昨年の2月24日に発売、今年10月25日に終売した「ロースカツ重」は、この間一回リニューアルしているが、定番商品ともいえるほどに長期間の販売をした商品である。
販売当初、各店での一日当たりの平均販売数が過去最高の三五食にもなったと聞いている。セブンイレブンは約八〇〇〇店舗を数えるので、一日で製造した弁当では日本で最も多いといえるだろう。
この商品の特徴は、いわゆるそば屋的な製法である丼鍋で一食ずつ調理はしていない。ゲル状の卵とじを大量に作り、調理済みのロースカツの上にこれをかけることで二八万食もの製造を可能としたのである。
それまでは丼鍋を使って製造しており、卵の衛生問題があって売れ筋商品であることははっきりしていたが、ベンダー泣かせの商品であった。この製造方法によって、大量製造を可能にし、一定の味を確保できる品質を保ち、さらに衛生面の向上に役立ったのである。
このような技術改革によってコンビニは進化をつづけており、ある部分的な商品では加工食品が調理食品を越えているものも出現している、といって良い。
近年、コンビニ商品群はかなり向上している。だが、コンビニのFFは大量製造方法によるため、いわゆる「できたて」の商品提供が難しい。コンビニが脅威としているホットを売り物とした弁当路面店とは、こうした点で商品の格差を実感せざるを得ない。
コンビニユーザーの商品への要求は年々高くなっている。コンビニが、かりにできたてのFFを提供できたら、FF業界はコンビニによって席巻されてしまっていただろう。
電子レンジによってホットでの提供ができてはいるが、コンビニに求められるスピーディーさは失われている。なにより、できたてでないことで、弁当路面店などの台頭はコンビニユーザーに対し影響していくものと考えられる。
ミニストップはこのことに危機感を覚え、レジ周りの充実によって是正しようとしているが、コンビニが商品にホット感を与え、満足できる結果をFFで実現できるのはかなり先のことであり、従ってコンビニの売上げにブレーキがかかる要因の一つとして無視できない問題である。
アメリカのFFの売上げは、その大半がレストランのテークアウトに集中している。そのためにHMRが発達し日本でも注目され、スーパーがこれに反応し、活発な動きをしているのは周知の通りである。
FFへの要求が高まる一方で、コンビニの機能性がユーザーの欲求を満足し得ないとするならば、今後アメリカと同様の状況が生まれ、レストランをはじめ、外食産業に対するFFへの期待が高まっていくのは必須といえる。
そのためには、レストランのテークアウトに対する強いアプローチが必要であり、そのためシステムの確立が望まれる。さらに、コンビニの商品改廃及び戦略についての情報も必要であろう。